鳥籠事件――。
小鳥と一緒に監禁されて育った幼い兄妹は、保護から1年後に誘拐され、行方不明となった。
それから24年後、鎌田署の刑事・森垣里穂子はひょんなことから無国籍者ばかりが住む”ユートピア”に辿り着き、そこに住む兄妹が鳥籠事件の被害者ではないかと推理する。
兄妹は頑なにDNA鑑定を拒否するが…
辻堂ゆめさんの『トリカゴ』を読みました。
あらすじ
鎌田署の刑事・森垣里穂子は、傷害事件の容疑者・ハナが、食品会社の倉庫にある無国籍者コミュニティに住んでいることを知る。
ハナとその兄・リョウが、24年前に発生した「鳥籠事件」の被害者ではないかと推理する。
「鳥籠事件」では、ネグレクトした母親が幼い姉弟を小鳥と一緒の部屋に監禁し、保護されたときには鳥の鳴き声のような声しか出すことができず、鳥と同じような食べ方、歩き方をしていた。
感想
プロローグに割り当てられている「鳥籠事件」の概要に、まずショックを受けます。
生まれたときから小鳥と一緒に監禁され、鳥のような鳴き声や、鳥と同じような食べ方をする3歳と1歳の兄妹…
私もサザナミインコを飼っていますが、インコだけを見て、”エサ”を与えられて生きていると…と考えるとぞっとします。
まだ矯正のきく年齢だったことがせめてもの救いでしょうか…
森垣里穂子は、無国籍者たちが暮らす”ユートピア”のリョウ、ハナ兄妹がこの「鳥籠事件」の被害者ではないかと見て、たびたびユートピアに足を運び、戸籍や住民票を取得するための手助けまでしようとするのですが、過去に役所で相手にされなかった経験を持っていたり、ユートピアの生活に馴染んでいる彼らからは、煙たがられる存在になってしまいます。
おまけに、「鳥籠事件」の兄妹が保護から1年後に誘拐された事件を専属で追っている刑事・羽山が無国籍者たちの感情を逆なでするので、余計にうまくいきません。
普通なら、無国籍者たちが心を少しずつ開いていき…となるのでしょうが、この作品では、むしろ心を閉ざしていってしまいます。
やっぱり、小説のようにはうまくいかないよなぁと…(小説だけど)
また、刑事という大変な職業に就く妻を支える夫の陽介には、感心しっぱなし。
私はここまでできないわ。
最後の方に出てくる「人間を殺す勇気はなかった」という言葉は重かったですね。
プロローグに出てきたひとこととも関連するのですが、そう来たかと…
それですべてが繋がるところが良かったです。
ひとつの傷害事件から、制度の不備にまで踏み込んだ読み応えのある作品でした。
機会がありましたらぜひ。




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