【読書】柚月裕子『検事の死命』

柚月裕子 佐方貞人シリーズ ├ 柚月裕子

地元の名家、武本家の婿養子・弘敏が、電車内で痴漢行為をしたとして、迷惑防止条例違反で逮捕された。
被害者の女子高校生は2度の補導歴があり、武本は容疑を否認していた。
送検されてきた案件を担当するのは若手検事の佐方貞人。
地元の有力者らから圧力がかかる中、佐方は査定のポイントにもならないような小さな案件を起訴することにこだわる。

柚月裕子さんの『検事の死命』を読みました。

広告
広告
広告
500万冊以上の電子書籍が読み放題『Kindle Unlimited』への登録はこちらから

あらすじ

『死命を賭ける 「死命」刑事部編』

米崎地方検察庁刑事部の検事・佐方貞人のもとに、電車での痴漢案件が配点されてきた。
一方の加害者は地元の名家の婿養子・武本弘敏。
武本は痴漢を訴えられたあと、被害者の女子高校生から示談金を払うよう持ちかけられたという。
地元の有力者や地検上部などから圧力がかかる中、佐方は武本の起訴を試みる。

死命を決する 「死命」公判部編

刑事部から公判部に異動した佐方のもとに、異動直前に佐方が起訴した案件が配点される。
被告の弁護士は県下最大の法律事務所を率いる井原智之。
決定的な証拠がない裁判を、佐方はどう戦うのか?

感想

「佐方貞人シリーズ」の第3巻です。

短編が4編収められており、第1話で佐方の人となりを示し、第2話で佐方のバックボーンを説明し、第3話、第4話で本題の痴漢行為の案件に臨みます。
シリーズを順に読んできた人なら、改めて佐方という人物像を思い出せますし、初めて手に取った方でも、佐方がどういう人物なのかを理解した上で本題に入れる構造になっています。

電車内での痴漢行為は、もはやニュースにもならないくらい多発していますが、面白いんですかね?
触った感触がいい?それとも、嫌がる様子を見るのがいいのでしょうか?
私には理解できませんし、あまりにもハイリスクローリターンで、そんなことをしようとも思いません。

関東にいた頃、朝は始発の電車に乗っていたので大体座れたのですが、帰りは混雑した車内。
自衛策として、片手で吊り革やその上のフレームを持ち、もう片方の手で本を持っていました。まぁ、通勤時間が長かったので、貴重な読書時間でしたし。

被害者の女子高校生は2度の補導歴を持ち、被告の男性は地元の名士。
冤罪?って思わせてから、佐方がどう判断するのかを見守るところなんかは上手かったですね。

裁判の場面が出てくる話として、パッと頭に思い浮かぶのは、中山七里さんの「御子柴礼司シリーズ」と、ジェフリー・アーチャー。
「御子柴礼司シリーズ」は、最後に中山七里さんお得意のどんでん返しに持ち込むための序章といった感じでしたが、ジェフリー・アーチャーの作品は、1つ1つの検察側と弁護側の弁護士のやりとりを楽しめるものが多くなっています。
日本とは制度や文化、歴史が違うため、単純に比較はできないものの、これまで読んだことのある裁判が扱われた作品としては、ジェフリー・アーチャーの『誇りと復讐』が1番ですね。

今回の作品も、文庫でラスト100ページ弱を割いて裁判でのやりとりが描かれていますが、面白い作品に仕上がっています。
シリーズもののサガとして、どちらが勝つかはわかっているのですが(負けることもありですが、多くの場合、そのあとで取り返す必要があります)、1つ1つの言葉の応酬で流れが変わったり、決定打は何なのかを想像したりと、読み応えがありました。

最終的には、自分にできることをやり切った側が勝利。
細部まで手を抜かないということの大切さを改めて感じさせられました。

収録作品

『死命を賭ける 「死命」刑事部編』、『死命を決する 「死命」公判部編』のほかに、『心を掬う』、『業をおろす』が収められています。

心を掬う

佐方は郵送した手紙が届かないという話を2件続けて耳にする。
佐方は事務官の増田に、宛先とどこに投函したかを調べるよう指示を出す。

業をおろす

佐方は父の13回忌のため、地元に帰省する。
佐方の父は弁護士だったが、横領の罪で服役中、膵臓ガンで亡くなっていた。
横領した金を返していれば執行猶予が付いたかも知れないのに、佐方の父は実刑の確定後に返金していた。
佐方は、なぜ父が進んで実刑を受けたのかがわからないでいた。

とても面白かったので、機会があればぜひ!

コメント

タイトルとURLをコピーしました