アガサ・クリスティーの『鏡は横にひび割れて』を読みました。
ミス・マープルが住む、セント・メアリ・ミード村にも新興住宅地ができた。
次に殺人事件が起きるとしたら、新興住宅地の中でだろうと話をしていたら、村にあった館に引っ越してきたアメリカの有名女優、マリーナ・グレッグ、ジェースン・ラッド夫婦の引越祝いのパーティーで、ヘザー・バドコックが毒殺されてしまう。
事件の直前、ヘザー・に誰かがぶつかって、手にしていた飲み物がこぼれてしまい、代わりにマリーナがまだ口をつけていない自分の飲み物を手渡していた。
そのマリーナのもとには、セント・メアリ・ミードに引っ越してくる前に、「死ぬ用意をしろ」と、パーティーの後には「このつぎはのがれられると思うな」という紙切れが届いていた。
この作品は、アガサ・クリスティーが72歳の時に書いたものだそうです。
と言っても、1962年のこと。今からおよそ60年前の作品ということになります。
当然、時代設定も古いのですが、さほど気にならないのが凄いところ。
新興住宅地の中にできたスーパーマーケットのことを、「自分で籠をもって品物を探してまわらなきゃならない」と嘆いているところなどもありますが、逆に新鮮だったりもします。
ただ、訳が古いため、少し読みづらさを感じるでしょうか。
「今ならこういう言い回しにするだろうに」と思うところがちょこちょことあります。
ハヤカワ文庫でも、順番に新訳版が発行されていて、ずいぶん読みやすくなった作品もあるのですが、残念ながらこの作品にはまだ順番が回ってきていないようです。
ただ、私が中学生の頃に読んでいたものに比べ、文字が少し大きくなったためか、以前ほどの読みずらさは感じなくなった気がします。
さて、今回は「ミス・マープル」もの。
私はこのミス・マープルのシリーズがあまり好きではないのですが、この作品は面白いということを聞いたので、チャレンジしてみました。
ミス・マープルといえば、安楽椅子探偵の代表格だと思うのですが、序盤は積極的に動き回っているのが印象的です。
と言っても、事件とは直接関係ないところなのですが、道で転んだところを第1の被害者であるヘザー・バドコックに助けられたりと、興味以上の関心を持って事件に相対することになります。
安楽椅子探偵ものと言えば、捜査にあたる人間らが集めてきた情報を探偵に聞かせ、それをもとに事件を解決するというのがお約束です。
この作品も例に漏れずなのですが、これは、謎を解くための手がかりを、すべて読者と共有することを意味します。
今回の場合、動機が1番重要なポイントなのですが、ミステリの王道に則った作りになっているとも言えるでしょうか…
さて、私の苦手な「ミス・マープル」ものだったのですが、評判どおり、読みやすい作品だったかなと思います。
久しぶりすぎて、ミス・マープルって、こんなに詮索好きで、お節介なおばあさんだったっけ? そもそも、こんな高齢だったっけ?ってところから入りましたが、それなりに楽しめました。
謎解きの部分が長ったらしいイメージがあったのですが、それもなく、また別の作品を読もうかなと思える1冊でした。
アガサ・クリスティーにはちょっと思い出があって、本を手にするとその思い出がよみがえってくるのが、良い部分でもあり、悪い部分でもあるのですが…
過去の「アガサ・クリスティー」記事
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