誰が埋めたかわからない。誰を恨めばいいのかわからない。地雷は「顔のない敵」なのだ。
地雷除去のNGOが活動するカンボジアで、地元選出の国会議員の息子・チュオンが対人地雷に触れて死亡した。
NGOのメンバー・坂田は、死体の不自然さに気づくが…
石持浅海さんの『顔のない敵』を読みました。
あらすじ
カンボジアで地雷除去の作業をしていた坂田とアネットは、遠くで対人地雷が爆発した音を聞き、現場に駆けつける。
そこには、地元選出の国会議員の息子で地主のチュオンが、頭と右手首の先を吹き飛ばされて倒れていた。
しかも、その周りには現地には設置されていない中国製の地雷が多数散らばっていた。
感想
私が1番嫌いな兵器が対人地雷。
対人地雷は、人を殺すためではなく、ケガをさせることを目的にした兵器です。
命を奪わないことで医療機関を切迫させ、手足が不自由な人が残ることで、社会的に負担をかける…
それならいっそ殺してしまった方がとは言いませんが、考え方が特に非人道的な兵器だと思っています。
この作品が書かれた頃は、まだ1つ1つ手で探して処理をしている時代だったようですが、現在はパワーショベルを改造した地雷除去機を用いることで、手作業の頃と比べて20~100倍程度の効率アップが図られていると聞いたことがあります。
7編の短編が収められていますが、最初の3編は石持浅海さんらしいハウダニット(どうやったのか?)の作品。最後の2つはフーダニット(だれがやったのか?)の作品になっています。
最後に収められている『暗い箱の中で』は、石持浅海さんの処女作なんだそうですが、今も作風が変わっていなくてニヤリとしてしまいます。
また、それ以外の6編が、対人地雷を扱った作品に。
あとがきを読むと、石持浅海さんの中でも、対人地雷は特別な存在なようです。
収録作品
表題作のほか、『地雷原突破』、『利口な地雷』、『トラバサミ』、『銃声でなく、音楽を』、『未来へ踏み出す足』、『暗い箱の中で』が収められています。
地雷原突破
対人地雷を使用禁止にする国際条約について話し合われているブリュッセルで、対人地雷の除去を行っているNGOが、踏むと音が鳴る模擬地雷で作った地雷原を作ってパフォーマンスを行ったが、メンバーが見本を見せている最中にまぎれていた本物の地雷が爆発してしまう。
利口な地雷
防衛省と企業が共同で開発している、一定時間が経つと爆発しなくなる地雷の開発会議の最中、企業の担当者がトラップにかかって殺害されてしまう。
トラバサミ
手製のトラバサミを持った男が交通事故死した。
男の部屋を捜索すると作成中のトラバサミなどが見つかったが、購入した材料から計算すると、すでに1つのトラバサミが仕掛けられていることが予想された。
銃声でなく、音楽を
地雷除去作業を行うNGOが、スポンサー候補の企業を訪ねていくと、プレゼンテーションルームの中に、頭を拳銃で撃たれた男性が倒れていた。
未来へ踏み出す足
地雷除去ロボットを開発している日本の企業と研究機関の合同チームが、カンボジアの地雷原でテストを行い、成功を収めた。
しかしその夜、企業の担当者が殺害されてしまう。
暗い箱の中で
仲間内でこの日で退職する理恵の送別会を行うために会社を出発した5人だったが、由紀子が忘れ物をしたため会社に戻ることになった。
しかし、地震のせいでエレベータが停止し、真っ暗なエレベータの中で由紀子が刺殺されてしまう。




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