干潮時にしか本土と道が繋がらないスマグラーズ島に唯一あるジョリー・ロジャー・ホテルに宿泊中の元女優アリーナ・マーシャルが白昼堂々ビーチで絞殺された。
アリーナは夫のケネス・マーシャル大尉と連れ子のリンダと共にこの島を訪れていた。
そしてまた、このホテルでバカンス中だった名探偵エルキュール・ポアロが事件の謎に挑む。
アガサ・クリスティーの『白昼の悪魔』を読みました。
あらすじ
スマグラーズ島のビーチで元女優のアリーナが殺害された。
アリーナは夫のマーシャル大尉と夫の連れ子のリンダとともにこの島にあるジョリー・ロジャー・ホテルに宿泊していた。
しかも、アリーナの不倫相手もこのホテルに滞在していた。
そしてまた、このホテルでバカンス中だった名探偵エルキュール・ポアロが事件の謎に挑む。
感想
49年ぶりの完全新訳版で読みました。
中学生の頃、クラスメイトに借りてむさぼるように読んだアガサ・クリスティーですが、次第に古い言い回しが読みづらくなってきて、今では新訳版をたまに読むだけになってしまいました。
新訳版といっても、話し言葉には古い言い回しがわざと使われていたりして、約100年前に書かれた小説だということを思い出させてくれます。
とはいえ、やはり新訳版は読みやすい!
文字が大きいのも嬉しい点ですが、やはり言葉遣いが現代風なのが良いですね。
隠れた名作として名高い(?)この作品ですが、使われているトリックは非常に凝ったもの。
確かに読み物としては面白いのですが、実際にこれだけ面倒なことをする人がいるのだろうか?本当に成功するのだろうか?と思いながら読ませていただきました。
というのは、まったく謎を解けなかった一読者の言い訳です…
舞台は、干潮の時のみ本土と道が繋がるプライベートアイランド、スマグラーズ島。
この設定だけで軽いクローズドサークルができあがってしまいます。
クローズドサークルにするメリットは数知れずですが、さらっと舞台を整えてしまうところがさすがです。
そして、約100年前の物語らしく、”上級国民”は罪を犯さないというお約束が、当然のように事件捜査にも適用されていて…
まぁ、これは現在の実世界でも変わらない部分があるのかな?
謎解きの場面は、『アガサ・クリスティー完全攻略〈決定版〉』の中で霜月蒼さんが書かれているように、瞬発力を感じさせられるもの。
残りのページ数をカウントしながら読んでいると、謎解きに割くページが足りなくなるんじゃないの?と思ってしまうのですが、そこをズバッと解決まで持ち込む瞬発力は目を見張るものがありました。
長々とした謎解きがあまり好きではない私にはぴったりの展開だったかな。
欲を言えば、終盤のピクニックに行っている間に起きた事件がもう少し早いタイミングで起きていたら良かったかな?と…
でも、それだと、最後の謎解きまでの間が持たないし…と、小説を書くのは本当に難しい作業なんだなと、改めて感じました。
最初は退屈かもと思いながら読みはじめたのですが、いつの間にかグイグイと惹きつけられて…
やっぱりクリスティーは面白い!
他の作品も手に取ってみたくなりますね。
とりあえず、チャールズ・オズボーンによって小説化された戯曲『招かれざる客』や『蜘蛛の巣』あたりを読もうかな?と思っています。
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