弁護士資格を剥奪され、法曹界から追い出された上水流涼子は、東大卒でIQ140、実務もこなせる貴山伸彦を助手として雇い、公にできない揉め事を解決する〈上水流エージェンシー〉を立ち上げる。
未来が見えるという男、賭け将棋で突如連勝しはじめた男、かつて涼子を法曹界から追い出した男、野球賭博で不当な利益を得ている男らを、涼子と貴山の2人が斬る。
柚月裕子さんの『合理的にあり得ない 上水流涼子の解明』を読みました。
あらすじ
『合理的にあり得ない』
神崎恭一郎は、バブルの絶頂期に不動産を転がし、バブルが弾ける直前に不動産を売り払ったことで、巨万の富を得ていた。
現在は株の配当と利回りだけで悠々自適の暮らしを過ごしていた。
しかし、息子の克哉は高校進学後に引きこもりになってしまい、妻の朱美は幸運をもたらすという石や皿、壺などに2千万もの大金をつぎ込んでしまう。
感想
ただ捜査をするだけでなく、最後にどんでん返しを用意しておいて、悪者にひと泡吹かせるという、痛快な短編が5編。
裏表紙のあらすじには、涼子が「弁護士資格を剥奪された」とか、貴山が「頭脳明晰」などと書かれていますが、前半に収められた短編ではそのあたりに触れられていません。
理由がわからなくて、なんだか喉に魚の骨が刺さっているような感じだなぁと思いながら読み進めていくと、ようやく『心情的にあり得ない』で事の顛末が明らかに。
過去の出来事に驚くと共に、現在の状況にも驚愕。
最後の『心理的にあり得ない』で出てくる、野球賭博のハンデの話はよくわかりませんでした。
もっとも、そんなものは知らない方が幸せなのかも知れませんが。
収録作品
表題作のほか、『確率的にあり得ない』、『戦術的にあり得ない』、『心情的にあり得ない』、『心理的にあり得ない』が収められています。
『確率的にあり得ない』
建設会社の社長・本藤仁志は、行きつけのクラブで知り合った「未来が見える」と言う男・高円寺裕也に、経営上の判断をたびたび相談するようになった。
高円寺の回答は、ピタリと当たるのだが…
『戦術的にあり得ない』
暴力団トップの日野は、別の暴力団トップの財前と賭け将棋をする仲だったが、この夏までは5勝5敗の5分の成績だったが、その後財前が3連勝しているという。
1億円を賭けた大勝負を前に、財前の不正を明らかにして欲しいと言う。
『心情的にあり得ない』
涼子が法曹界から追い出されるよう陥れた諫間が、家出した娘を探して欲しいと依頼してきた。
諫間の娘は、合コンで知り合った男と交際しており、駆け落ち同然に姿を隠したらしい。
『心理的にあり得ない』
一通りのギャンブルに手を出した予土屋が選んだのは、野球賭博だった。
涼子の事務所を訪れた桜井由梨は、予土屋に騙されて自殺したと、捜査を依頼してきた。
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