【読書】櫛木理宇『死刑にいたる病』

著者カ行 ▼著者 カ行

大学生の筧井雅也のもとに届いた手紙は、シリアルキラー(連続殺人鬼)からのものだった!
雅也が小学校高学年から中学生の頃に通ったベーカリーの店主・榛村大和は、24の殺人の罪で逮捕され、そのうち9件で立件されて1審で死刑判決を受けていた。
しかし、その9件の中の1件は自らが犯した殺人ではないとして控訴していた。
榛村は、その1件について調べて欲しいと雅也に依頼してきたのだった。

櫛木理宇さんの『死刑にいたる病』を読みました。

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あらすじ

義務教育時代は秀才として名が通っていた筧井雅也は高校で躓き、志望よりも遙かにランクの低い大学で、友人も作らずやさぐれていた。
そんな雅也のもとに、実家を経由して手紙が転送されてくる。
差出人は、雅也が小中学校時代によく通ったベーカリーの店主・榛村大和。
榛村は、ハイティーンの男の子、女の子ばかりを狙い、拷問を加えた上で殺害した24件の殺人の罪で逮捕され、そのうち証拠が固まった9件の殺人で立件されていた。
当然の如く、1審の判決は死刑。
しかし、榛村は9件の中の1件は自らの犯行ではないとして控訴しており、雅也に調査を依頼してきたのだった。

感想

お初の作家さんです。
連続殺人とされた事件のうち、1件は他人の犯行…
最近同じような話を読んだ気がしますね。
殺人ではなく放火でしたが、柚月裕子さんの『検事の本懐』です。
『検事の本懐』では佐方貞人検事が執念を見せましたが、今回はどうなるのでしょうか?

全体的には面白いと思ったのですが、気になる点が大きく3点。

・検察は24件の殺人のうち、証拠が固まった9件を立件したにもかかわらず、なぜその中に状況証拠しかない1件を加えたのか?
・榛村はなぜ雅也に調査を依頼したのか?
・調査を行うにあたり、雅也はなぜ榛村の身辺、子供時代から調査を始めたのか?

1つめの疑問は、この小説を成り立たせるためですね。
証拠ががっちりと固まった事件ばかりだと、冤罪だと言う余地がなくなってしまいます。
なので、この疑問は解決。

2つめの疑問が、この作品を通して着いてまわることに。
榛村のベーカリーのお得意さんだったというだけの理由で、調査を依頼するか?という疑問については、終盤で答えを聞くことができます。

3つめの疑問が、1番大きな疑問でした。
素人の私が同じ依頼を受けたとしたら、榛村が冤罪だと言っている9件目の事件から調べると思うんです。
でも、雅也は榛村の人となりから調べています。
こういう発想は私にはないなぁ。
これも、小説を面白くするためということなのかな?
このあたりの地道な調査がのちに生きてくるわけですが…

私が冤罪事件が起きる度に感じることは、遺族や世間の怒りの矛先が、いつの間にか「犯罪を犯した人間」から「罪を着せられて逮捕された人間」に変わっていること。
「逮捕された=真犯人」みたいになってしまって、無罪が証明されているのに「反省して罪を償って欲しい」というようなコメントが出てくる…
今現在も真犯人が大手を振って町を歩いているという事実の方がよっぽど怖いと思うんですけどね。

コメント

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