戦国時代に大名家を滅亡させた人形が、500年ぶりに封印から解き放たれた。
人形の名はお梅。持ち主であった豊姫や殺害された者たちの怨念が乗り移り、瘴気を発生して人を呪い殺すことを目的とした人形になっていた。
しかし、500年後の世界は何もかもが変わっていて驚きの連続。
しかも、肝心の瘴気が現代人には効かないどころか、呪い殺そうとした相手が幸せになってしまう。
藤崎翔さんの『青梅は呪いたい』を読みました。
あらすじ
古民家の解体作業中、押し入れの中から古めかしい木箱が見つかった。
作業員が木箱を開けると、中に入っていたのは赤い着物を着た人形・お梅。
戦国時代、呪いによって大名家を滅亡させたお梅は木箱に入れられ、封印が解けるのを待ちわびていた。
お梅の封印を解いた途端業者のトラックが動き出し、作業員が巻き込まれた。
お梅は街へと繰り出し、次なる標的を探すが、約500年後の世界は驚きの連続だった。
しかも、呪い殺すはずが人を幸せにしてしまう。
どうする?お梅。
感想
元お笑い芸人という経歴をお持ちの藤崎翔さんの本領発揮といった作品になっています。
私がはじめて読んだ藤崎翔さんの作品『お隣さんが殺し屋さん』も、次に読んだ『指名手配作家』も、ユーモアの要素がたっぷりつぎ込まれていましたが、サスペンスやミステリーの要素が色濃く表れていました。
しかし、この作品は、サスペンスやミステリーといった要素はほとんどなく、ユーモアに全振りした作品になっています。
お梅は5人を呪い殺そうとするのですが、お梅が発する瘴気がなかなか通用しません。
それどころか、幸せを生んでしまう結果に…
500年の間にお梅の能力が落ちてしまったのか、それとも現代人が瘴気に対する免疫を付けたのか?
章ごとにお梅のターゲットが変わるのですが、脇役とも言える人たちが共通して出てきたり。
そんなに都合良く出くわすかなぁ?とも思うのですが、人形が歩ける範囲(ってどんな範囲だ?)は限られていますので、ごくごく近所でのお話。
宅配便の配達員が同じだったとしても、確かにおかしくはないですよね。
そんな人と人の繋がりが、最後に向かってどんどんと増していって…
ただ面白いだけの小説ではないあたりが上手いなぁと思いながら読ませていただきました。
お梅の考えていることを文章にした部分は、”ゐ”、”ゑ”、”を”を乱発。
仮名使いはこれで合っているのか?たぶん間違っていると思う。
でも、お梅の知識が500年前の世界がもとになっていることがよくわかるのでOK。
呪い殺すのを失敗するだけでなくってところが良いなって思いました。
こういう作品好きだなぁ。
機会があればぜひ!
続編の『お梅は次こそ呪いたい』も出版されているので、手に取ってみたいと思います。
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