「最後にもう1人証人を召喚したいと思います」
かつて検事だった佐方貞人は、検事を辞めたあと弁護士として働いていた。
今回弁護を引き受けたのは、密室となったホテルの1室での殺人事件の被告。
やがて、事件の背後に7年前に起きたある交通事故の影がちらつきはじめる。
佐方は、最後にもう1人の証人が法廷で証言してくれるか否かが、この裁判の結果を左右すると考える。
「佐方貞人シリーズ」の第1弾！
柚月裕子さんの『最後の証人』を読みました。
あらすじ
高瀬光治・美津子夫妻は、7年前に小学5年生だった最愛の息子・卓を事故で亡くしていた。
原因は、車の運転手の信号無視、そして飲酒運転。
厳罰が下るだろうと思った高瀬夫妻の前に突きつけられた現実は、不起訴。
飲酒の事実はなく、自転車を運転していた卓の信号無視が原因とされてしまった。
高瀬夫妻は、車の運転手が公安委員長の島津邦明だったことを突き止め、復讐を決意する。
感想
お初の作家さんです。
殺人事件の裁判の合間に、高瀬夫妻の身に起きたことが7年前から順に挟まれていくというストーリー展開。
しかし、順当な話の流れで、このままだと何の面白みもないまま終わってしまう予感。
当然、何か仕掛けがされているのだろうなと思いながら読み進めていったのですが、柚月裕子さんが用意した仕掛けは、ミステリファンなら当然想定内のもの。
それでも面白いと思わせられたのは、柚月裕子さんが書く人間の部分なんでしょうね。
最後には大きな宿題を残すことになりましたが、どこまで大きく、深くなるのかを想像するのはたやすいことではありません。
真実を明らかにしない方が、皆幸せになったかも知れませんが、それを良しとしなかった佐方弁護士の行動には、考えさせられるものがありました。
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