赤坂通、多摩川流司、八ツ橋京介の探偵部トリオが誕生してから20年。
探偵部副部長の霧ヶ峰涼、第二文芸部の部長・水崎アンナらを輩出してきた鯉ヶ窪学園に、新たな名探偵が現れる。
学園の理事長の娘であり、上級生はもちろん教師たちも抗うことができない朝比奈麗華は、同級生の石橋守をワトソン役にして学園で起きる事件の謎を解こうとするが、ひょんなことから本当の名探偵が登場する。
東川篤哉さんの『朝比奈さんと秘密の相棒』を読みました。
あらすじ
『名探偵、密室に現る』
私立鯉ヶ窪学園のミステリ研究会の部室に泥棒が入った。
窓は施錠されており、前日の活動を終えたあと、出入り口の扉に南京錠をかけたあと、翌朝部員の1人が鍵を開けるまでの間に泥棒が侵入したらしい。
職員室にある部室の鍵が保管されている一角は防犯カメラの視野の中で、鍵が持ち出された様子はなかった。
学園の理事長の娘で、高等部2年の朝比奈麗華は、報告に来た同じ2年の石橋守と密室の謎に挑むが…
感想
「鯉ヶ窪学園シリーズ」の6作目です。
と、「鯉ヶ窪学園シリーズ」として1つに纏められているのですが、作品によって登場人物が異なるのがこのシリーズの特徴(?)です。
20年前の2004年に出版されたのが、探偵部の部長・多摩川を含むトリオを主役にした『学ばない探偵たちの学園』。そして、同じトリオを主人公とした『殺意は必ず三度ある』。
さらに、探偵部副部長の霧ヶ峰涼を主人公にした『放課後はミステリーとともに』、『探偵部への挑戦状 放課後はミステリーとともに』。
第二文芸部を舞台にした『君に読ませたいミステリがあるんだ』。
そして、今回「鯉ヶ窪学園シリーズ」の一員に加わったのが、朝比奈麗華と石橋のコンビというわけです。
同じ鯉ヶ窪学園を舞台にしただけというわけでなく、それぞれの作品の間でゆる~い繋がりがあるので、過去の作品を読んだことがある人は、「あの時のあの人ね」って感じでくすりと笑えるようになっています。
一方、過去の作品を読んでない方も、過去の作品の知識は必要とされていないため、問題なく読むことができるようになっています。
この『朝比奈さんと秘密の相棒』は、5つの短編から成る連作短編集になっているのですが、探偵の登場と退場のシーンが衝撃的。
東川篤哉さんらしいユーモアと、ちょっとした非現実感が得られます。
また、ユーモアを交えながら、本格的なトリックを織り交ぜてくるのが東川篤哉さんの特徴。
私は、1つめのトリックはわかったのですが、残りの4つはダメでした。
『名探偵、密室に現る』のほか、『殺人が未遂だった話』、『生徒会役員室の攻防』、『天使はプールサイドに浮かぶ』、『茶室に消えた少女』が収められています。
『殺人が未遂だった話』
鯉ヶ窪学園近くの雑木林で、学園の生徒・井川まどかが刃物で刺されて倒れているのが発見された。
まどかはその日、アイドルのコンサートに行った帰りだった。
『生徒会役員室の攻防』
生徒会役員室の麗華のロッカーが荒らされた。
さらに、今では使用されなくなった焼却炉の中で、同校の教師・葉山真由の死体が発見された。
『天使はプールサイドに浮かぶ』
警備員の澤村和哉が夜間に見回りをしていると、プールに不審な気配を感じた。
プールの脇にある高飛び込み台を確認していると、突然頭を殴られ、気絶する直前に宙に浮く天使の姿を見たと言う。
『茶室に消えた少女』
放課後、教室の麗華の机をあさっている女子生徒を発見した。
麗華と石橋はあとを追うが、袋小路になった場所にある茶室のあたりで女子生徒を見失ってしまう。
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