中山七里さんの『スタート!』を読みました。
あらすじ
近年のテレビのスペシャル版化した映画に嫌気がさした助監督の宮藤映一は、久々に名映画監督・大森宗俊がメガホンをとると聞きつけ、大森のもとに駆け参じた。
しかし、ここにも時代の波が押し寄せており、制作は共同委員会方式をとり、テレビ会社が幹事を努めることになった。
プロデューサーとして、テレビ会社から曽根が派遣されたが、スタジオでモニタを見ていた際に、天井から落ちてきたライトの下敷きになってしまう。
感想
本を手に取って、パラパラとめくったときに、古手川刑事の名前が見えたので、渡瀬警部と古手川刑事のコンビが活躍するのかなぁと思ったのですが、渡瀬や古手川は映画の役名の方でした。
その他の登場人物を見ると、今回大森らが映画化しようとしているのは、『連続殺人鬼カエル男』のようです。
撮影シーンを見ていても、やっぱり『連続殺人鬼カエル男』そのもの。
映像化は難しそうな作品なので、小説の中で映像化しちゃえってなったのでしょうか。
この作品単体でも面白いのですが、先に『連続殺人鬼カエル男』を読んでおくと、よりわかりやすいかと思います。
ただ、『連続殺人鬼カエル男』はちょっとグロテスクな場面が多いので、その点は注意が必要なのですが…
映画の撮影ものというと、どうしても赤川次郎さんが得意にしているというイメージがあります。
しかし、その赤川次郎も、近年そういった作品を書かなくなってきているのは、中山七里さんと同じような思いがあるからなのかなぁと思いました。
フィルムに画を映す時代から、ディジタルカメラの時代へ。そして、実写からCGへ…
様々なことができるようになりましたが、その一方で薄っぺらくなってしまったものも。
そんな映画界に興味が薄れてしまったのと同時に、警鐘を鳴らしているのかなぁと。
終盤はピンチの連続でしたが、それをなんとか乗り切った映一たち。
その先に何が待っているのか。
中山七里さんだけに、いろんな想像をしてしまいましたが、読み終わってから考え直すと、1番しっくりとくる結末でした。
コメント