中山七里さんの『ヒートアップ』を読みました。
あらすじ
人間の破壊衝動と攻撃本能を呼び起こし、どんな臆病者も人間兵器に変えてしまう悪魔のクスリ〈ヒート〉。
開発した製薬会社の国内研究所は消滅したものの、市場では若年者向けに流通が続いていた。
厚労省麻薬取締官の七尾究一郎は、広域暴力団宏龍会のナンバー3・山崎岳海と手を組んで、〈ヒート〉の撲滅を目指す。
しかし、〈ヒート〉の売人・仙堂寛人が隠れ家で殺害され、現場からは七尾の指紋が残された凶器が発見される。
感想
『魔女は甦る』の続編です。
前作ではちょい役として出ていた麻取(麻薬取締官)の七尾が主人公。
登場人物はガラリと変わっていますが、前作の流れを受けての作品ですので、先に『魔女は甦る』を読むことをおすすめします。
中山七里さんの作品では、死体から臓器がえぐり出される「犬養隼人シリーズ」の『切り裂きジャックの告白』や、人間をカエルのように殺していく連続猟奇殺人事件『連続殺人鬼カエル男』など、グロテスクな殺人を描いた作品がありますが、私はこの『魔女は甦る』と『ヒートアップ』の2作の方が恐ろしさを感じます。
『切り裂きジャックの告白』や『連続殺人鬼カエル男』は、猟奇殺人とは言え、ある程度理性の効いた人間が犯した事件。
それに対して、〈ヒート〉を使用した人間は、攻撃本能に従って行動し、痛みも感じない。死ぬまで戦い続ける、人間が人間でなくなるクスリとして描かれています。
映画に例えれば、『プレデター』のような、地球外から戦闘を行うために生まれてきた種族がやってきたような恐ろしさです。
クライマックスシーンは、ハリウッド映画にしたら面白いかなぁとは思いますが、現実的にはちょっと無理があるかな?と思ったのはご愛敬。
でも、〈ヒート〉を”有効利用”したところは、思わずため息が漏れてしまいました。
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