中山七里さんの『追憶の夜想曲』を読みました。
あらすじ
法外な弁護料と引き換えに、依頼人に有利な判決を引き出すことで悪名高い弁護士・御子柴礼司。
その御子柴が、高額な弁護料など見込めない夫殺しの被告・津田亜季子の弁護を自ら買って出た。
対する検察は、御子柴の因縁の相手・岬恭平自らが法廷に立つ。
感想
『贖罪の奏鳴曲』に続く「御子柴礼司シリーズ」の2作目です。
暴利をむさぼるどころか、自らも少年時代に凶悪事件を犯した経験を持つ異色の弁護士。
その御子柴が、報酬度外視で、重罪が確定していると思われる事件の弁護を引き受けたのはなぜなのか?
書き出しを読んだだけで、あれこれと頭の中を想像が駆け巡ります。
ちなみに、この『追憶の夜想曲』から読んでも良いようにはなっていますが、前作『贖罪の奏鳴曲』の後を受けての作品になっているため、先に『贖罪の奏鳴曲』を読んでおくことをお勧めします。
『連続殺人鬼カエル男』でも思ったのですが、中山七里さんって、グロテスクな描写がお得意?
死体を切り刻むときに、脂がノコギリの歯につくと途端に切れなくなるとか、そんな知識をどこで仕入れたのだろうと思ってしまいます。
これが想像だけで書いているのなら、本当に凄い人だなぁと、怖くなったり…
高裁での第二審が舞台となるのですが、被告は一審で懲役16年を言い渡されており、起訴事実も認めている。
それをひっくり返して、無罪か執行猶予付きの判決でも勝ち取らなければ、物語が成立しなさそう。
「どんでん返しの帝王」との異名を持つ中山七里さんが、どんなカードを切ってくるかと、存分に楽しみながら読ませていただきました。
裁判ものというと、私はすぐにジェフリー・アーチャーを思い浮かべてしまうのですが、前作『贖罪の奏鳴曲』では、やっぱりジェフリー・アーチャーの方が上かな?と思ったのですが、この作品に関しては、引けを取らない面白さだなと思いました。
日本の法廷と、欧米との違いがあるので、空気感が異なるのですが、甲乙つけがたいなと。
今回の私と「どんでん返しの帝王」との勝負は、1勝1敗って感じかな。
でも、私の1勝に比べて、1敗の方がはるかに大きいので、客観的に見れば完敗。
「まさか、そこまで!」と、絶句させられました。
このシリーズはまだ続くようなのですが、御子柴がどんな状況に置かれているのか、今から興味が尽きません。
あと、「岬洋介シリーズ」とのゆる~い繋がりが見られたのも小さな驚きでした。
これで、「岬洋介シリーズ」を読むときの見方が変わっちゃうかなぁ?
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