阿津川辰海さんの『蒼海館の殺人』を読みました。
〈僕〉こと田所信哉は友人の三谷緑郎とともに、同級生で不登校になってしまった葛城輝義を訪ねる。
葛城家はY村の中の高台にあったが、田所らが訪ねた日は台風が近づいてきて大雨に。近くを流れる川は氾濫し、逃げ遅れた村民たちを屋敷に避難させたが、屋敷の中では連続殺人事件が起きていた。
以前に事件を解決したこともある迷探偵の輝義は身内に疑いの目を向ける。
アガサ・クリスティーの名探偵ポアロシリーズを読んでいるような気分になりました。
序盤は事件解決のための伏線を張ることに注力し、後半で回収していきます。
複雑に絡み合った糸を丁寧に解きほぐし、数々の事象の中から事件を解決するためのヒントを選び出していく…
その謎解きも、おそろしく長く複雑です。
義輝は、事件を3段階に分けて解いていきますが、下の段階と上の段階で言っていることが矛盾していたりと、着いていくのが大変。
きっと、頭が良い読者向けに書かれたミステリなんだろうなぁと…
はじめは、ちょっと長い読書になりそうだなぁと思ったのですが、途中から面白くなってきて、最後は細かいところはどうでもよくなっちゃう(作者が犯人だっていっているんだから犯人なんでしょうって思っちゃう)作品でした。
奇を衒って、話を複雑にしすぎたのかなぁと感じました。
あと、事件を複雑にするため+αのために洪水が使われていますが、きっと阿津川辰海さんは洪水を経験したことがないんだろうなぁと思ってしまいました(私のように、経験がある人間の方が少ないでしょうが)。
確かにその効果は認めるのですが、物理学の法則に反しているところが散見されて、ちょっと興醒めしてしまいました。
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