東野圭吾『希望の糸』

東野圭吾さんの『希望の糸』を読みました。

 

 

喫茶店を経営する花塚弥生が殺害された。
弥生は離婚を経験していたが、事件の1週間ほど前、久々に元夫の綿貫哲彦と連絡を取っていた。
また、最近店の常連になった汐見行伸は、新潟中越地震で娘の絵麻と息子の尚人を亡くしていた。
その後、萌奈という女の子をもうけていたが、萌奈が中学に上がる前に、妻の怜子を白血病で亡くしていた。

さらに、捜査にあたる加賀恭一郎の従弟の松宮刑事は、自分の出生に関する秘密と向き合おうとしていた。

運命の赤い糸、蜘蛛の糸、解決の糸口…
糸と言ってもいろいろなものがありますが、「希望の糸」とはどのようなものなのでしょう?
糸と言うからには、細くて頼りないものを想像してしまいます。
その細い糸を切らないように、慎重にたぐっていくのが「希望の糸」なのでしょうか。

今回扱う殺人事件は、ありきたりなもので、とてもミステリ小説にして面白いものには見えません。
しかし、加賀や松宮の手によってもつれた糸を解きほぐしていくと、それまでは見えなかった真実が見えてきます。
これぞ、「加賀恭一郎シリーズ」の醍醐味と、思わずにんまりとしてしまいます。

ちょっとした誤解が悲劇を生み、その悲劇がまた悲劇を呼ぶ…
事件のこともそうですが、私生活一般においても同じことが言えるんじゃないかと思います。

今回は加賀恭一郎の従弟・松宮刑事の出生の関する秘密が明らかになっていきますが、それが担当している事件とうまくシンクロして、良い方向へ流れ出します。
このあたりの話の流れがさすがだなぁと、いつものことながら感心するのでした。

 

 

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