東野圭吾さんの『11文字の殺人』を読みました。
あたしが交際していた男性・川津雅之が殺害された。後頭部を鈍器で殴られ、港のそばにゴミのように捨てられていた。
川津は生前、命を狙われていると漏らしていた。
あたしは川津が残した資料をもらい受けたが、家に侵入して、資料を引っ掻き回した形跡が見つかる。
川津は1年前、スポーツクラブ社長の誘いでクルージングに出かけたが、そこで1人の男性が事故死していた。
川津から始まった連続殺人は、クルージングでの事故が関係しているのか?
物語は、誰かによるモノローグと、「あたし」目線での記述で進んでいきます。
この「あたし」には名前が与えられていないのですが、そのことがミステリアスな雰囲気を創り出すのに一役買っています。
主人公の名前がわからないことが、これほどまでに不安定さを生むものなのかと、思い知らされた作品でした。
クルージング中の事故にまつわる連続殺人ということは、早い段階で見えてくるのですが、連続殺人というわりには、遠くの方で殺人が起きているような印象を受けます。
そのあたりも、一人称の使い方が上手いなぁと思いました。
「11文字」が何を指しているのか、すぐわかるようでわからない、東野ワールドを堪能できる1冊でした。
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