東野圭吾さんの『ある閉ざされた雪の山荘で』を読みました。
ある劇団のオーディションに合格した男女7人が、早春の乗鞍のペンションに集められた。
7人には新作推理劇の細部を作りあげるため、雪で閉ざされた山荘に客としてやって来た人間になりきって欲しいというのが、脚本家の東郷陣平からの指示だった。
指示通り、ペンションでの生活を始めたその夜、遊戯室でピアノを弾いていた笠原温子が姿を消し、「死体はピアノのそばに倒れていた。首にはヘッドホンのコードが巻きついており、絞められた痕がある」と書かれた紙が置かれていた。
ペンションから1人、また1人と消えていくのは、芝居の一部なのか?
『ある閉ざされた雪の山荘で』というベタなタイトルの作品です。
そのベタベタっぷりにこれまで触手が動かず、避けてきたのですが、今回思い切って手に取ってみました。
タイトルは『ある閉ざされた雪の山荘で』なのですが、実際の舞台は早春の乗鞍のペンション。
雪で閉ざされた山荘に閉じ込められた客を演じろという設定なんですね。
物語は、参加者の1人である久我和幸の独白と、いわゆる神の目線での記述が交互に繰り返されます。
久我は山荘内で殺害される大勢の中の1人なのか、それとも犯人か…
神の目線に立つもう1人の人物が隠れているのかとも思いましたが、彼らの会話から7人以外に客はいなさそう。
推理のきっかけも掴めませんでしたが、探偵役の推理を聞いていると、なるほどと思わされます。
その端口は難解なものでしたが…
殺害現場には死体の状況が書かれた紙だけが残されていて、死体が消えているというのがミソ。
血のついた鈍器まで出てきて、死体役が退場しただけなのか、本当に殺害されたのかわからないというところが絶妙でした。
ただ、本当に殺害された可能性を考えると、やや緊迫感に欠けるかなぁという点が気になりました。
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