東野圭吾『天空の蜂』

東野圭吾さんの『天空の蜂』を読みました。

錦重工業と自衛隊が開発していたヘリコプター〈ビッグB〉がハイジャックされた。
自動操縦機能を乗っ取った犯人が、リモートで操作した〈ビッグB〉は、福井県にある高速増殖炉『新陽』の上空へ。
犯人らは、全国にある原子力発電所を使用不能にすることを要求してきた。
要求に応えなければ、爆発物を搭載した〈ビッグB〉を『新陽』の上に落下させるという。

ハリウッド映画顔負けの、大きなスケールの作品になっています。
大がかりな舞台装置に隠れてはいるものの、ホワイダニット(なぜ、やったのか)というミステリの基本要素の1つが柱になっています。

ヘリコプターを盗まれるという大失態をやらかした錦重工業のセキュリティは、そんなに甘いはずないでしょと思う反面、結構良いところを突いているよなと思う部分もあったり。
ヘリコプターに子供が乗り込んでしまった件も、作品の本質に関わる部分ではないので、さらっと…

この子供が1人〈ビッグB〉に乗り込んでしまい、命がけで救助にあたるというのが前半のヤマ場。
まるで、映像化を考えて書かれたのではないかと思うくらい、綺麗な前半のヤマ場でした。

面白かったのは、犯人の狙い。
上でホワイダニットと書いたとおり、そこがこの作品の肝なのですが、上手いところに持っていったなぁと思いました。
半ばあたりから、犯人の立場がわかってくるのですが、真の狙いは最後にならないとわからないという、絶妙な展開。
さすがは、東野圭吾さんです。

1つ残念なことと言えば、この作品が書かれたあとに、東日本大震災が発生して、福島第一原子力発電所の事故を経験してしまったこと。
面白い作品ではあるのですが、あの事故で避難を余儀なくされたり、被曝されたりした方には、ちょっとお勧めしにくいかなと。
あと、あの事故を経験して、この作品で書かれている内容について、ちょっと違うなと経験的にわかったこともありますし…
それでも、改めて原子力発電について考えるきっかけになるような、そんな作品になっていると思います。

 

 

 

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