東川篤哉さんの『君に読ませたいミステリがあるんだ』を読みました。
あらすじ
鯉が窪学園高等部に入学した”僕”は、文芸部の部室のドアを叩いた。
中で待っていたのは、部長の水崎アンナ。
しかし、そこは「文芸部」ではなく将来はプロとして作家デビューを目指す人の集団「第二文芸部」だという。
と言っても、部員は部長のアンナただ1人。
入部するかどうか悩む”僕”の前に、アンナは自作の学園ミステリの原稿を差し出した。
感想
うーん、なんと言えば良いのでしょう…
「面白い」?
でも、その「面白い」というのは、「作品が面白い」という意味ではなく、「試みが面白い」と言った方がぴったりくると思います。
第二文芸部の部長である水崎アンナは、部室を訪ねて来た”僕”に、5編の短編ミステリを読ませます。
これが「君に読ませたいミステリ」の正体。
でも、その実態は、ツッコミどころ満載の、高校生が書いたミステリです。
そのアンナが書いたミステリがページの大半を占めているわけですが、「読んでいる」と言うよりも「読まされている」と言った方が相応しい代物。
肝心のトリックには「おぉ!」と言わされそうになるのですが、普通の小説には使えないような、穴だらけのトリックというところが、1つのオチになっているわけです。
5つの短編を読んでいくと、最後に(東川篤哉氏による)大きな仕掛けが用意されているのですが、ちょっと不発に終わった感があったり…
それよりも、「悠二」って名前なのに、1人っ子ってことの方が気になってしまいました。
作品の評価は、この作品をどう読むかによって大きく変わってくるのではないかと思います。
水崎アンナが書いた学園ミステリに期待しすぎると、途中で本を投げ出したくなるような気分になるかも知れません。
その学園ミステリの出来も含めて、東川篤哉さんの術中にハマっていくと、次元を超えた感動に出会えるかも?
舞台は、鯉が窪学園高等部。
『学ばない探偵たちの学園』、『殺意は必ず三度ある』、『放課後はミステリーとともに』、『探偵部への挑戦状 放課後はミステリーとともに2』の舞台にもなったところです。
これら4作とは直接の関連はありませんが、一部の登場人物がゲスト出演しているので、これらの作品を読んだことがある方なら、くすりと笑えるのではないでしょうか。
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