赤川次郎さんの『灰色のパラダイス 杉原爽香〈45歳の冬〉』を読みました。
「杉原爽香シリーズ」の31作目になります。
毎年1歳ずつ登場人物が歳を重ねていくというこのシリーズですが、第1作目では15歳の中学3年生だった杉原爽香が、45歳になってしまっています。
当初は20歳まででシリーズを打ち切るということも考えておられたようですが、そのまま書き続けて31年。年齢ごとの落ち着きや心境の変化、悩みなど、本当にうまく書き分けておられると思います。画家のいわさきちひろさんが、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、…の子を描き分けておられたというエピソードを思いだしてしまいました。
10代の頃は若気の至りといった部分が書かれていたり、20歳前後の頃は子供から大人になるという変化についていけない悩み、その後はがむしゃらに生きていた時代、そして、ようやく落ち着いて周りを見ることができるように…と、今思い出すだけでも杉原爽香の波瀾万丈の半生が思い浮かびます。
初期の作品では、主人公の杉原爽香を中心に事件が展開し、杉原爽香自身が事件の渦中にいることが多かったように思いますが、最近では、他所で起こった事件が杉原爽香に飛び火するというパターンが増えてきたように思います。
今回も、周りで起きた事件がだんだんと杉原爽香を取り囲んできて、最後は…といった感じ。前半はこれがどう繋がっていくのかな?と少し落ち着かないぐらいの話の展開なのですが、終盤に向けて一気にまとめ上げていく展開は、いつものことながら脱帽です。
主人公である杉原爽香が毎年1歳ずつ歳をとるということは、当然周りの人たちも歳をとっていきます。
22作目で生まれた長女の珠実も、来年には10歳を迎えようとしています。さらに5年後には、このシリーズが始まった時の爽香の年齢である15歳になります。なんだか1周といった感じですが、その先もシリーズは続くのかなぁ?続いて欲しいなぁ。
また、杉原爽香の恩師である河村布子の長女爽子はもう25歳!?バイオリニストとして大活躍の日々を送っているようです。
また、このシリーズの重鎮、栗崎英子(女優・87歳)や堀口豊(画家・96歳)はいまだ健在。でも、その間の年齢層の人たちが次々と倒れていくんですよねぇ。今後年齢のバランスが崩れないかなぁ…なんてことは気にしなくても良いか。
気になっていた『灰色のパラダイス』というタイトルですが、読んでみるとその奥深さがよくわかるタイトルでしたよ。
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