【読書】大倉崇裕『福家警部補の報告』

大倉崇裕さんの『福家警部補の報告』を読みました。

あらすじ

『禁断の筋書』
漫画家の河出みどりはかつて、三浦真理子とともに漫画を書いていた。
同人誌で人気を集め、出版社からの声がかかったが、声をかけられたのはみどり1人だった。
一方、出版社の営業部長になった真理子は、みどりを干そうとしていた。
真理子の自宅に押しかけたみどりは、はずみから真理子を殺害してしまうが、これを事故に見せかけようと偽装する。
そこに立ちはだかったのが、福家警部補だった。

感想

「福家警部補シリーズ」の3冊目です。
一貫して倒叙形式がとられており、福家警部補がどうやって犯人を追い詰めていくかを楽しむことができます。
刑事には見えない外見と、ちょっとオタクっぽい内面。
少し頼りなさそうな雰囲気があるものの、事件だと断定する際や、最後に犯人を追い詰める際には鋭いキレを発揮します。

『禁断の筋書』では、衝動的な犯行にも関わらず、それを事故と見せかける犯人。
福家警部補でなければ、事故として処理されていた…となるのですが、ちゃんと捜査をしていれば、事件であることはわかっただろうにと思ってしまいました。

様々な筋書を練っている漫画家と、福家の勝負というところが見所だと思うのですが、ビリビリとくるような女同士の対決が見られたら、もっと良かったかなと思いました。

大倉崇裕さんの作品は、「警視庁いきもの係シリーズ」から読みはじめたので、ユーモアミステリのイメージだったのですが、この「福家警部補シリーズ」ではユーモアの要素が少なくて、ちょっとギャップを感じていたのですが、『少女の沈黙』から急にユーモアが混じるようになってきて、今後の作品が楽しみになってしまいました。

その他、『少女の沈黙』、『女神の微笑』が収められています。

『少女の沈黙』
解散した暴力団の元組長・栗山邦孝の弟・次郎が、邦孝の娘・比奈を誘拐した。
元ナンバー2の菅原巽は、手下の金沢と次郎が相討ちしたように見せかけて殺害し、比奈を助け出す。

『女神の微笑』
宝石店の金庫を爆弾で開けようとして失敗し、今度は銀行強盗を企てていた3人組が爆弾によって殺害された。
犯人は、息子を亡くし、車椅子の妻をいたわる後藤秀治だった。