米澤穂信さんの『真実の10メートル手前』を読みました。
あらすじ
フリージャーナリストの太刀洗万智は、経営破綻したベンチャー企業フューチャーステア社長の早坂の妹であり、同社広報担当の真理への接触を試みる。
前夜、真理の妹である弓美にかけた電話の内容から、真理が山梨にいると推測するが…
感想
「太刀洗万智シリーズ」の3作目という位置づけですが、過去の2作品との関係は薄く、どの作品から読んでも良いようになっています。
小さな謎を万智がズバッと推理していくあたりは、どちらかというと、『王とサーカス』よりも『さよなら妖精』に近いでしょうか。
万智の推理の鋭さに目を見張るものの、完全にフェア。
推理に必要な情報は全て開示されていますので、万智との推理勝負を楽しむこともできます。
派手さはないけど、じっくり練られた謎解きを味わえる、地味に面白い、米澤穂信さんらしい作品になっています。
表題作のほか、『正義感』、『恋累心中』、『名を刻む死』、『ナイフを失われた思い出の中に』、『綱渡りの成功例』が収められています。
『正義感』
ラッシュアワーの駅で、人身事故が発生した。
その場に居合わせたジャーナリストらしい女性がさっそく取材を始め、見物人に質問を投げかけた。
「人を線路に突き落とした感想はいかがですか?」
『恋累心中』
三重県の恋累という場所で、高校生の男女が心中する事件が発生した。
週刊誌の記者・都留正毅は、別件で現地入りしていた太刀洗万とともに取材を開始する。
『名を刻む死』
ひとり暮らしの老人・田上良造の遺体が発見された。
発見したのは近所に住む中学生。いつかこんなことになるのではないかと、田上の家に気を配っていた矢先の出来事だった。
『ナイフを失われた思い出の中に』
16歳の少年が3歳の姪を刺殺する事件が発生した。
その事件を取材中、太刀洗は友人の兄であるヨヴァノヴィチの訪問を受ける。
『綱渡りの成功例』
8月の台風で孤立した民家から、老夫婦が3日がかりで救出された。
老夫婦は、息子が残していったコーンフレークを食べて飢えをしのいだと言うが…
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