宮部みゆきさんの『ペテロの葬列』を読みました。
今多コンツェルンのグループ広報誌の副編集長・杉村三郎は、編集長の園田瑛子と取材の帰りに乗ったバスが、佐藤一郎と名乗る老人にハイジャックされた。
佐藤は人質たちに慰謝料を払う約束をしていたが、警官突入の際に自殺してしまった。
1ヶ月ほど経った頃、人質になった人たちの元へ、本当に数百万円の慰謝料が送られてきた。
杉村たちが、この金を受け取って良いものか思案しているうちに、事件の背景にネズミ講詐欺の存在が見え隠れしてきた。
シリーズ作品の主人公を張るような人物とは思えない、杉村三郎を主人公にしたシリーズの3作目です。
これまでも立てこもり事件など、物騒な事件に巻き込まれてきた杉村ですが、今回はバスジャック。
ですが、事件は呆気なく終焉を迎えたと思いきや、そこからが本番。
当然のことながら(?)、宮部みゆきさんが書きたかったのはバスジャックなんかじゃなく、もっと大きな問題でした。
今回、杉村が深い深い谷底に引き込まれてしまったのは、ネズミ講という特殊な事件が絡んでいたから。
ネズミ講というのは、最上位の人間と、最下位の人間以外は、被害者でもあり、加害者でもあるという特殊な状況に置かれているからです。
そこを絶妙に突いた作品になっているなぁと感じました。
また、最終盤では、さらなる大きな試練に。
こちらは、とりあえずの結論が出たようですが、この先どうなっていくのやら…
シリーズ最終作じゃないのかと思うくらい、変化に富んだ終わり方になっていました。
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