縁切り上等! 人の縁を切るのは楽しいのよお。
縁切寺として有名な〈東衛寺〉の娘で弁護士の松岡紬は、離婚専門の弁護士。
たまたま紬の事務所に駆け込んだ牧田聡美は、紬と専属探偵の出雲の力を借りて、夫・亮介の浮気の証拠を集めはじめる。
新川帆立さんの『縁切り上等! 離婚弁護士 松岡紬の事件ファイル』を読みました。
あらすじ
くやしくば尋ね来て見よ松ヶ岡
聡美は、生後10ヶ月の長男・翔を抱え、夫の牧田亮介を振り切るために、縁切寺として有名な〈東衛寺〉に駆け込んだが、そこは離婚専門の弁護士・松岡紬の事務所だった。
夫の言動に耐えきれなくなって家を飛び出してきた聡美は、紬と事務所専属の探偵・出雲のアドバイスを受け、亮介との離婚に有利な証拠を集めはじめる。
感想
紬先生、「縁切り上等!」というタイトルとはちょっとイメージが違っていたでしょうか。
同じ新川帆立さんの『元彼の遺言状』の主人公・剣持麗子のようなイメージを勝手に思い浮かべていたのですが、実際はふわっとした感じの弁護士さんでした。
第4話では、同性カップルの場合の親権問題や財産分与の話など、まだまだ法整備が間に合っていないんだなぁと思いながら読んでいました。
ただ、この手の問題が議論されるたびに思うのですが、まず「婚姻とは何か?」という定義づけを行う必要があるのではないかと思います。
婚姻とは何かが定まっていないから議論が複雑になるのであって、この部分をしっかりと定めてしまえば、あとはその定義に沿って物事を決めていくだけだと思うんですよね。
第5話の亮介のうつ病の話は上手かったですね。
亮介の身勝手さが改めて浮き彫りになったかと思いきや、同僚の話を訊くとそれだけではなかったことがわかり…と、聡美の亮介に対する気持ちが二転三転して…
読む側も、新川帆立さんの掌の上でいいように転がされてしまいました。
シリーズ化とまでは言いませんが、もう1作、2作読みたいなと思える作品でした。
収録作品
『くやしくば尋ね来て見よ松ヶ岡』のほか、『松ヶ岡男を見ると犬がほえ』、『星月夜あきれるほど見て縁が切れ』、『松ヶ岡寝そびれた夜のぐち競べ』、『またいびりたくば鎌倉までおいで』が収められています。
松ヶ岡男を見ると犬がほえ
紬の事務所を、妻が浮気をした末に子供を連れて出て行ったと言う男性が訪ねて来た。
妻は気分の浮き沈みが激しく、暴力も振るうためなんとしても子供の親権が欲しいと言うが…
星月夜あきれるほど見て縁が切れ
山岸花枝から、64歳の夫と離婚したいという相談を受けた紬は、夫に退職金が入るまで、もう1年我慢した方が良いとアドバイスをする。
しかし、花枝は財産分与の額が少なくても、すぐに離婚することにこだわりをみせる。
松ヶ岡寝そびれた夜のぐち競べ
弁護士会の相談センターで紬が相談を受けた女性は、同性パートナーとの離縁を望んでいた。
同性のパートナーの場合、異性のパートナーの場合とはいろいろな面で差が生じてしまう。
またいびりたくば鎌倉までおいで
聡美の元夫・亮介がうつ病で休職したため、養育費を減額してほしいと言ってきた。
亮介の同僚から話を訊いた聡美は、亮介に対する見方が変わってくるが…




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