米澤穂信さんの『ボトルネック』を読みました。
高校1年生の嵯峨野リョウは、2年前に事故死した恋人・諏訪ノゾミを弔うために、福井県の東尋坊を訪れた。
転落防止の鎖から身を乗り出して崖下を覗いているうちに、ノゾミの声が聞こえた気がした。
次の瞬間、リョウは宙へと投げ出されていた。
リョウが目覚めたのは、東尋坊ではなく、地元金沢の河川敷のベンチだった。
自宅に戻ると、そこには見知らぬ女性が。
リョウより1歳年上のサキだという。そして、この家にはリョウという人物はいないと言われる。
サキは、リョウが生まれる1年前に死産した姉が生きている姿で、リョウは自らが存在しない世界に迷い込んでしまっていた。
こういう話は結構好き。
しかも、私の第2の故郷、福井が使われているということで、迷わず手に取りました。
ちなみに、私には第1の故郷と言える場所はありません。
小学校2年生に上がるときに引っ越しているので、生家周辺はごくごく断片的な記憶しかないし、引っ越した先は”生まれ故郷”ではないので、やっぱり故郷という感じが…
って、そんなことはどうでも良いですよね。
リョウがなぜ自分が存在しない世界に迷い込んでしまったのか?
リョウはもとの世界に戻れるのか?
というのがこの手の作品の鍵になるのでしょうが、どちらも少し曖昧な感じが残っているように思いました。
リョウが迷い込んでしまった世界では、恋人のノゾミは生きているのですが、なぜノゾミが死んでしまったのかを、ノゾミが生きている世界で解き明かすという話になっています。
このあたり、なかなか苦労して書かれたんじゃないかな?と思いました。
また、最後の場面ですが、A→B→Aになったとも考えられますが、A→B→Cになったという可能性もあって、いろいろと考えさせられる結末でした。
東尋坊が重要な役割を果たしているということを差し引くと、ちょっと物足りない作品だったかな?というのが正直な感想です。
どこが?と聞かれると困るのですが、全体的にほんのちょっとずつ…
なんて言いながら、一気読みしちゃったわけなんですけどね。
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