【読書】浅倉秋成『九度目の十八歳を迎えた君と』

浅倉秋成 ├ 浅倉秋成

彼女は19歳になることを止めてしまった。
印刷会社に勤める間瀬が駅で見たのは、向かいのホームに立つ高校の同級生・二和美咲だった。
美咲はあの頃と変わりなく、高校の制服を着ていた。
現在の美咲の同級生に言わせると、会社員になろうと思うから会社員になるのと同列で、高校生のままでいたいと思うから高校生のままでいる人がいるだけで、おかしいと表現することに違和感を感じるらしい。

浅倉秋成さんの『九度目の十八歳を迎えた君と』を読みました。

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あらすじ

印刷会社の営業マン・間瀬豊が早朝の駅で見たのは、向かいのホームに立つ高校の同級生・二和美咲の姿だった。
美咲は18歳のまま歳をとることをやめ、9度目の高校3年生を過ごしていた。
現在の美咲の同級生・夏河理奈は、美咲が歳をとることをやめたことを受け入れられない間瀬に対して、会社員になろうと思うから会社員になるのと同列で、高校生のままでいたいと思うから高校生のままでいるだけだけだと主張するが、その一方で美咲を18歳に留めている原因を排除し、19歳になって欲しいと間瀬に相談を持ちかける。

感想

『六人の嘘つきな大学生』に続き、2冊目の浅倉秋成さんの作品です。
『六人の――』では、就職活動の様子とその8年後が描かれていましたが、この作品も間瀬と美咲の高校時代と、間瀬の卒業8年後が描かれています。
浅倉秋成さんにとって、8年という期間は何か意味があるのでしょうか?ちょっと興味をひかれました。

18歳のまま歳をとらないという設定に、間瀬同様違和感を感じながら読み進めていくのですが、そのうちにその設定を受け入れている自分がいて不思議な気持ちになります。
美咲の現在の同級生である理奈の、高校生のままでいたいから高校生のままでいるんだという説明も違和感が…
でも、そのうちにそんなこともあるのかな?って思えてきてしまうんですよね。

理奈が推理した美咲が18歳になれない理由を聞いたときには、思わず天を仰ぎましたが、すぐに否定されてしまい…
これ以上の理由が他にあるの?と思いましたが、そこから上手く話が展開されました。
振り返ってみると、理奈の推理と大きく違わないような気もするのですが、終盤の怒濤の展開と、美咲の心の中でより大きなウェイトを占めていたということで納得の理由でした。

ただ、最後の部分はよくわからないところがあったんですよね。
一番重要な部分だったと思うんですが、こういうことを言いたかったのかな?と自分なりに推測するまでになってしまいました。

間瀬が高校時代に出会った教頭先生がとっても素敵。
うちの長男が小学校の教師になりたいと言っているようですが、こんな教師になってしまうかも、なんて思いながら読んでいました。
それにしても、長男が小学校の教師って…
てっきり大好きな自動車関連の仕事に就くのかと思っていましたが、自動車は趣味にとどめるようです。
また、中学や高校ではなく小学校というのは、どこから来たのかな?
一応私も高校の教員免許を持っていますが、教職には就いていませんしねぇ。

間瀬の卒業アルバムをもとに、SNSなどを使って当時の同級生の居所を探すって場面が出てきますが、私からすると、卒業アルバムがあるなら実家に電話すれば良いんじゃない?と…
でも、今は卒業アルバムに住所や電話番号は載っていませんし、クラスの連絡網すらなく、先生が各家庭に電話を入れたりしているんですよね。
時代の流れを感じます。

また、指を切断してしまうエピソードが出てくるのですが、人間の指ってくっつくんですよね。
タコやヒトデのように、切断面から新しい指が生えてくることはさすがにないのですが、病院に切断した指を持って行くとくっつくことがあるんです。
私の姉も子供の時に指を切断したことがあるんですが、無事にくっつき、小学生の頃はエレクトーンを、中学高校ではクラリネットを吹いていましたので、人一倍器用な指になったようです。
ちなみに、指を切断してしまった場合は、袋に入れて冷やしながら病院へ行くと良いそうです。
ただし、凍らせてしまうと組織が死んでしまうので、あくまでも鮮度を保つために冷やす程度とのこと(どんな情報だ…)。

美咲のように永遠の18歳ってわけにはいきませんが、気持ちは若くありたいですね。あと、身体年齢と脳の年齢と…って言い出したらキリがありませんね。

読んでいると、中学生の頃のほろ苦い恋の話も思い出したりして…

ちょっと特殊な設定ですが、面白い作品でしたので、機会があればぜひ。

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