深夜に水筒を洗うために公園へ行く保育士、独身で同居人もいないのに紙おむつを買う男…
経営コンサルタントの傍ら、副業として殺し屋をしている富澤充への依頼は変わり種ばかり。
標的だけでなく、母親が付き添ってくる依頼人や、吸血鬼に噛まれたかのような痕をつけて殺害して欲しいと注文をつけてくるなど、依頼人の方も変わっている。
感情に押し流されないように、標的のことや依頼の動機を考えないようにしている富澤だが…
石持浅海さんの『殺し屋、やってます。』を読みました。
あらすじ
黒い水筒の女
経営コンサルタントの富澤充は、副業として殺し屋をしている。
仲介人を2人挟み、依頼者から富澤が突き止められないように、また、富澤が依頼者を突き止められない仕組みになっている。
今回の標的は、保育士。
園児や父兄、同僚との関係は良好そうだが、なぜか毎晩公園まで出かけ、水筒を洗うという日課があった。
感想
単行本デビューの作品となった『アイルランドの薔薇』、これまで4冊読んだ「碓氷優佳シリーズ」とは雰囲気がガラリと変わって、気楽に読める短編集になっています。
殺し屋が主人公ということで、いかにして標的を殺害するのかという話になるのかと思いきや、標的の不思議な行動、依頼人の不思議な依頼の謎を解くという話になっています。
依頼人と富澤の間には2人の仲介者が挟まれていて、依頼人と富澤の姿が直接見えないようになっているというところに、なるほどな、と感心。
まぁ、だからこそ最後の『狙われた殺し屋』ようなことが起きてしまうのですが…
また、依頼料は前金300万円、成功報酬350万円の計650万円。
1部上場企業の平均年収を基準にしたのだとか…
これが安いのか高いのか、相場はよくわかりませんが、臨時収入(しかも非課税)として考えると大きいですよね。
自分と無関係の人を殺害するわけですから、捜査線上にもあがりにくいと考えると、需要も供給もある価格設定なのかも知れません。
シリーズ化されているようなので、次も手に取ってみたいと思います。
収録作品
『黒い水筒の女』のほかに、『紙おむつを買う男』、『同伴者』、『優柔不断な依頼人』、『吸血鬼が狙っている』、『標的はどっち?』、『狙われた殺し屋』が収められています。
紙おむつを買う男
今回の標的は、学生時代過激派に所属していた男。
標的は独身で同居人もいないはずなのに、なぜか紙おむつを購入していた。
同伴者
依頼人からの仕事を受ける仲介人”伊勢殿”のところに依頼人がやってきたが、主に話すのは一緒にやってきた母の方。極度のマザコンなのか?
優柔不断な依頼人
ベンチャー企業の社長を殺害して欲しいと依頼が入ったが、下調べをしている間にキャンセルとなった。
しかし1ヶ月後、改めて標的を殺害して欲しいとの依頼が入る。
吸血鬼が狙っている
今回の依頼は、殺害方法を指定するというオプション付き。
首を針のようなもので刺し、しかも縦に3、4cmの間隔で2ヶ所刺して欲しいというものだった。
標的はどっち?
佐田結愛を殺害して欲しいと依頼されたが、結愛は二階梨乃という女性と住居をシェアしていて、2人共が別の会社で”佐田結愛”という名前で働いていた。
狙われた殺し屋
富澤のもとに新たな殺害依頼が入る。
標的として指定された写真に写っていたのは、富澤本人だった。
コメント