【読書】麻根重次『千年のフーダニット』

著者ア行 ▼著者 ア行

153年前にシオンを殺害したのは誰だ?
若くして妻を亡くしたクランは、6人の被験者とともに、人類初の長期間冷凍睡眠実験に参加する。
1000年後、クランら6人は計画通りに目覚めたが、被験者の1人・シオンだけは目覚めることがなかった。
シオンは装置の中でミイラと化していたが、装置を再起動するには外部から操作する必要があった。

麻根重次さんの『千年のフーダニット』を読みました。

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あらすじ

長期間冷凍睡眠(コールドスリープ)の実験に参加したクランらは、計画通り1000年後に目覚めた。
しかし、7人の被験者のうち、シオンだけが起きてこない。
「テグミネ」と呼ばれる殻状の装置を開けると、シオンは背中を刺され、ミイラと化していた。
シオンのテグミネは153年前に強制停止された形跡が残っていたが、テグミネを再起動するには、外から操作する必要がある。
実験施設のシェルターは内側からしか開けられない仕組みになっているが、シオンを殺害した人間はどこからやってきたのか?

感想

実際に作品自体も長いのですが、”壮大な物語”という言葉がピッタリとくる作品でした。

私が子供の頃、人間を冷凍保存するというSFの読み物を読んだ記憶があります。
確かに、超低温にすれば、細胞をそのまま保存できそうですが、その超低温に下げるまでの過程と、常温に戻す過程をどうするのかが難しそうです。
しかしながら、SFの世界の話だけではなく、将来の惑星探査のために、宇宙空間を飛行中の宇宙船の中で、乗員をコールドスリープするという研究が本気で行われているそうで。

また、何度も映画化されている『猿の惑星』を思い出しました。
私は1作しか見ていないので、他の作品でどのような結末が用意されていたかはわからないのですが、読んでいてそれに近いものを感じました。

タイトルにある「フーダニット」とは、ミステリで用いられる”Who (has) done it?”:誰がやったのか?を表す言葉です。
しかしながら、シェルターは内からしか開けられませんし、テグミネは外からしか操作できない。また、なぜコールドスリープ中のシオンを殺害する必要があったのかと、「ハウダニット:どのようにやったのか?」、「ホワイダニット:なぜやったのか?」といった謎もあります。
しかし、最終的に「フーダニット」に帰着するところが見事でした。

1000年後…
予想もつきませんね。
異常気象に地球温暖化、少子高齢化、公的福祉の問題が大きくなり、今より住みづらい世界になっていることは確実のような気がします。
そんなことを言いつつ、子供をもうけたわけなのですが、この作品の中に出てくるように、近い将来、都市部に住民を集める強制移住や、国の合併といったことも起きる可能性は十分にあると思われます。

私なんかは、この先1000年に何が起きるかなんて難しいことを考えようとも思いませんが、作者の麻根重次さんは、しっかりと勉強をされて、適格な回答を挙げられているように感じました。

”大作”と言っても良いくらいの物理的ヴォリュームと論理的ヴォリュームをもつ作品で少々疲れましたが、今年何らかの賞をもらっても不思議でない気がします。
機会がありましたら是非。

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