米澤穂信さんの『Iの悲劇』を読みました。
あらすじ
南はかま市の職員・万願寺邦和は、無人となった旧簑石村に市街から定住者を募る市長直轄のIターン推進プロジェクトを担当する甦り課に転属になった。
意外にも結構な数の移住希望者の応募があり、その中から選ばれた十数組が実際に簑石に移住してきたが、移住者からは様々な要望、苦情が甦り課に寄せられる。
万願寺と同僚の観山遊香はこまめに簑石に足を運び、献身的に移住者をサポートするが、1人、また1人と移住者たちは簑石を去って行く。
感想
『Iの悲劇』というタイトルを見てまず思い出すのが、エラリー・クイーンの『Xの悲劇』、『Yの悲劇』、『Zの悲劇』。
中学生の頃に読んだかなぁ。
実は、このシリーズ、3部作ではなく、このあとに『レーン最後の事件』という作品があるんです。
この4作を読んで、はじめてこのシリーズ全体に張り巡らされた大きな仕掛けが完成するという…
って、話が脱線してしまいました。
この『Iの悲劇』は、エラリー・クイーンのものと違って、殺人事件などは出てきません。
米澤穂信さんらしく、日常に潜むミステリを解き明かすような作品になっています。
父が土曜夕方18時からテレビ朝日系で放送される『人生の楽園』が好きでよく見ているのですが、あの番組で取り上げられるのは、Iターン、Uターンに成功した人たち。
その影には、こうして夢破れた人たちがいるんだろうなぁと呑気に考えながら読んでいたのですが、最後に突きつけられた課題は、大きく胸に突き刺さりました。
IターンやUターンが地方の活性化に繋がると考えていた私ですが、そこには大きな落とし穴も。
途中、万願寺が弟との電話で話した内容も、その布石になっていたのかもしれません。
もう一度、地方自治や日本の構造について考えるべきなのかなぁと感じました。
今回テーマとなったIターン。
私自身は、そんな生活も悪くないかなぁといった気分。
具体的に行動を起こすかと聞かれれば、また別の話になってしまうのですが、面白そうだなと、興味はあります。
最後はなかなか重い展開になってしまいましたが、少しさび付いた頭に刺激を入れてくれる1冊でした。
コメント