知念実希人さんの『硝子の塔の殺人』を読みました。
あらすじ
科学者にして大富豪、そしてミステリフリークの神津島太郎が、ミステリの歴史が根底から覆される発表を行うために、6人の客を〈硝子の塔〉に招待した。
医師の一条遊馬は、その発表前に神津島の部屋を訪ね、フグ毒を飲ませて殺害する。
予定外の出来事はあったものの、遊馬は神津島の部屋を密室にして、他の客人に紛れ込むことに成功する。
しかし、翌朝、執事の老田真三がダイニングで殺害されているのが発見される。
遊馬は、老田殺しの犯人に神津島殺しの罪も着せてしまおうと、名探偵の巴円香の助手を買って出る。
感想
全面ガラス張りとはいかないものの、各部屋に大きな硝子窓が取り付けられた、円錐形の建物〈硝子の塔〉。
まるで、すべてがお見通しであることを暗示しているようで、さらに、物語がはじまって早々、一条遊馬が神津島を殺害する場面が用意されているため、倒叙形式の作品かと思いきや、翌朝、遊馬以外の人物によって執事の老田を殺害されてしまうことで、空気がガラリと変わってしまいます。
そして終盤、さらなる一撃が加えられるのですが、「この作品はどこへ行ってしまうのだろう?」という不安を他所に、見事な纏め上げ方がされています。
ここまで見事に騙されてしまうと、あっぱれというほかありません。
この作品を読んでいて思ったのは、知念実希人さん自身が、相当ミステリを読み込んでいるなということ。
古典から、最近の作品まで、数々の名作を引き合いに出しながら物語を進めていく様には舌をまきました。
大のミステリ好きがミステリ作家になった、典型的なパターンなんだろうなと。
2022年の本屋大賞8位とのことですが、もっと評価されても良い作品じゃないかなと思いました。
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