【読書】中山七里『作家刑事毒島』

中山七里さんの『作家刑事毒島』を読みました。

あらすじ

『ワナビの心理試験』
フリーの出版プロデューサー・百目鬼次郎が、背後から柄のないアイスピックのようなもので刺されて殺害された。
百目鬼は〈小説すめらぎ新人賞〉の下読みを担当しており、落選させた三人の応募者から、脅迫めいた抗議文が出版社に届けられていた。
警視庁の犬養は、コンビを組む高千穂明日香に、刑事技能指導員で兼業作家の毒島真理の意見を訊いてくるよう指示する。

感想

タイトルの通り、主役は兼業作家の毒島真理ですが、その相棒役になるのが、「刑事犬養隼人シリーズ」で、犬養とコンビを組む、というか、OJT中の高千穂明日香。
毒島は犬養が新人時代のトレーナーだったそうですが、犬養も麻生班長も苦手とする人物だそう。
確かに、かなりクセの強い人物でしたが、そこまで苦手にする相手なのかなぁ？と、少し疑問に感じましたが、同じ警察官としてやりにくさを感じるのでしょう。

その毒島の言葉、作家を目指している人が読んだら叩きのめされるんじゃないかと思うくらい、厳しい言葉が続きます。
でも、そこには現実を見定めて、さっさと諦めろということではなく、愛のある提言が含まれていることが最後にわかります。
やっぱり、毒島は嫌なだけの人物ではなく、良い人なのかも？

このほか、『編集者は偏執者』、『賞を獲ってはみたものの』、『愛瀆者』、『原作とドラマの間には深くて暗い川がある』が収められています。

『編集者は偏執者』
編集者の斑目彬は、作家に無断でデビュー前の作品をアンソロジーに掲載したり、新人作家に、ヒットメーカーの作品の設定を与えて小説を書かせ、スキャンダルに発展させたりと、問題のある編集者だった。
その斑目が殺害されるが、容疑者の2人には鉄壁のアリバイがあった。

『賞を獲ってはみたものの』
双龍社新人賞の受賞パーティーのあと、選考委員と過去の受賞者による2次会で、受賞者に対する反省会を行うことが通例になっていた。
しかし今年度は、桐原夢幻が乾杯の席で受賞者に苦言を呈したため、過去3年の受賞者に対する説教が行われた。
3日後、桐原が仕事場のシュレッダーにネクタイを巻き込まれて死亡する。

『愛瀆者』
売れっ子作家の高森京平は、書店でのトークショーのあと、ファン3人を交えた打ち上げを開いた。
打ち上げに参加したのは、アンチ高森の書評をインターネットに上げ続けている桑江朋美と、ストーカーまがいの牧島日菜子、作家デビューを夢見る加納郁。
その打ち上げからの帰り、高森は石段から突き落とされて殺害される。

『原作とドラマの間には深くて暗い川がある』
毒島の作品が2時間ドラマの原作になることになった。
しかし、シナリオの最終稿が原作と大きく異なっており、クレームをつけた編集者と毒島との打合せが設けられ、毒島はプロデューサーの曽根に対して、「言われたことされた仕打ちは死んでも忘れないよ」と宣戦布告したが、その夜、曽根が殺害されてしまう。