貴志祐介さんの『硝子のハンマー』を読みました。
あらすじ
日曜日の昼下がり、ビルの12階にある介護サービス会社の社長室で、社長が倒れているのを、窓の清掃をしていた男性が発見した。
エレベーターは暗証番号を入れなければ12階に止まらず、廊下には監視カメラ、窓には防弾硝子がはめられていた。
当時、社長は昼寝中。副社長は外出中で、直接社長室に入ることができる専務室で昼寝をしていた専務が、社長殺害の容疑で逮捕される。
弁護団の1人、青砥純子は、防犯コンサルタントの榎本径の力を借りて、専務の無実を証明しようとする。
感想
文庫にして590ページ、はじめは前置きのような話が坦々と続くため、長い読書になるかな?と思ったのですが、いつの間にか物語の中に引き込まれていました。
ヴォリュームがある分、確かに時間はかかりましたが、時間を忘れさせてくれるくらいの面白さがありました。
前半は、純子と榎本が、次から次へとトリックの解を探し出してきては、否定されるといったことの繰り返し。
それにしても、これだけ多くのトリックをよく思いつくなぁと感心。
そして、後半は一転して、殺害犯の目線からの物語。
前半では、いかにこのトリックを解くかということを、純子と榎本と一緒に考えていたのに、いつの間にか、殺害犯の側についてしまって、このまま犯行がばれなければ良いのにと、感情移入してしまっている自分がいました。
それくらい、読者の心を操るのが上手い作家さんなんでしょうね。
もう1冊手を出したいと思わされました。
読み終わってみると、この『硝子のハンマー』というタイトルの絶妙さに、舌をまいてしまいました。
硝子というと、割れるイメージがあって、ハンマーとは正反対の物質のような気がして、何を意味しているのだろうと思いながら読んでいたのですが、読み終わってみると納得でした。
機会があればぜひ。
コメント