大倉崇裕さんの『生還 山岳捜査官・釜谷亮二』を読みました。
あらすじ
黒門岳付近の斜面で、滑落事故が発生した。
滑落したのは、中村貴代美。光沢入口から入ってピークを越え、黒門小屋で1泊。翌日一戸口に下山する予定だった。
新米山岳遭難救助隊員の原田昌幸は、先輩の釜谷亮二と共に黒門岳を目指す。
ナイフが突き刺さった黄色のダウンジャケットや、ポケットに入れられていた吸い殻など、遺体にはいくつか不自然な点が見受けられた。
感想
『聖域』に続いて、大倉崇裕さんの山岳ミステリ2冊目です。
『聖域』でも感じましたが、山に魅入られた大倉崇裕さんの山への愛と、山の厳しさが詰まった作品になっています。
私は、「警視庁いきもの係シリーズ」から、大倉崇裕さんの作品を読みはじめたのですが、読む順番を間違えたかなぁと思ったり。
「警視庁いきもの係シリーズ」は、ユーモアを前面に押し出した作品になっていますが、「福家警部補シリーズ」や、山岳ミステリの作品を読んでいると、別の作家さんじゃないかと思うときがあったり。
でも、「警視庁いきもの係シリーズ」も、ユーモアで隠されているものの、ミステリとして1本芯が通った作品なんですよね。
正当派のミステリ作家でありつつも、たまにユーモアを交えてみたくなる方なのかなぁと、今は思っています。
他の作家さんで言うと、東川篤哉さんがそんな感じなのかな。
『聖域』でも思いましたが、山の上という特殊な環境で、何が起きたのかを解き明かす過程は、なかなか見物です。
また、タイトルが『生還』になっているところが、ちょっと深かったり。
表題作のほか、『誤解』、『捜索』、『英雄』が収められています。
『誤解』
奥千岳の山小屋の主人・二宮隆が、水場のポンプの点検に下りたまま、戻らなくなった。
原田の歩行訓練と称して山に入っていた遭難救助隊特別捜査係の釜谷と原田は、水場に下りる斜面の途中で、落石にあって重傷を負った二宮を発見する。
現場には、不自然な血痕が残されていて…
『捜索』
武藤功が薪股岳に入ったまま帰ってこないという通報が入った。
釜谷と原田は捜索隊として薪股岳に入るが、武藤がどのルートを辿ったのか、登山口までどうやって向かったのかすらわからず、困難を極める捜索活動となる。
『英雄』
七冬岳で起きた雪崩の現場から、身元不明の男性の遺体が発見された。
釜谷と原田は、男性の身元を探っていくうちに、5年前に起きた「奇跡の生還」と呼ばれる遭難事故に行き当たる。
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