【読書】西村京太郎『殺しの双曲線』

著者ナ行 ▼著者 ナ行

西村京太郎さんの『殺しの双曲線』を読みました。

あらすじ 

一卵性双生児の小柴勝男と利男は、双子であることを利用した強盗を企てる。
犯行時にわざと顔を見せるが、それが勝男なのか利男なのか判別できないため、警察は釈放するしかないという寸法だ。
一方、婚約中の戸部京子と森口克郎のもとに、東北の雪山の中に建つホテルの宣伝のために、無料で招待したいという手紙が届く。
その招待に応じた2人がホテルを訪れると、ほかに4人の客が集まっていた。
しかし翌日、客の一人・矢部が、部屋の中で首を吊っているのが発見され、壁には「かくて第一の復讐が行われた」と書かれたカードが留められていた。

感想

西村京太郎さんの作品なのに、列車を使ったトリックが出てこないというところに惹かれて、作品を手に取りました。
雪山の中のホテルの事件については、クローズド・サークルにおける連続殺人もの。
作中で何度もアガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』が出てくるので、嫌でも意識せざるを得ません。

一方、双子であることを利用した強盗事件については、そんな方法があったのかと感心。
あいにく、私には双子の兄も弟もいませんが、世の中にはよく似た人間が3人いると言いますので、いつか試したいなぁと思ってしまったり。
ちなみに、そのよく似た人間の1人は知っていて、熊本城の天守閣に写真が飾られているそうです。
会社の同僚からその写真(写真の写真)を見せられたときには、思わず声が出ちゃうほど、よく似ていました。

『そして誰もいなくなった』のパターンなので、最後には犯人候補がいなくなっちゃうんですよね。
なんとか犯人の名前が出る前に、犯人に辿り着くことができましたが、それでもやっぱり、解けない謎が1つ。
答えを聞いてみると、「なんだ、そういうことか」ってなるのですが、そんな簡単なことが思いつかず、負けた気分。

犯人が用意していた最後のカードも予想できたのですが、それに対して警察が提示したカードは圧巻。
なるほど、そこに伏線が隠されていたのかと、感心してしまいました。

ちなみに、鉄道を使ったトリックは出てきませんが、タイトルにある「双曲線」から、鉄道のレールを想像してしまうのは、気のせいでしょうか?

西村京太郎さんが鉄道ミステリを書き始める前の作風に触れることが出来て、面白い体験をしました。また、それを抜きにしても面白い作品だと思います。
機会があれば是非!

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