鮎川哲也さんの『黒いトランク』を読みました。
あらすじ
東京の汐留駅に届いた大型トランクの中から、男性の腐乱死体が発見された。
差出人は九州に住む近松千鶴夫だったが、兵庫県の別府港に遺留品を残して失踪。後日、服毒、投身自殺をしているのが見つかった。
近松の妻・由美子から相談を受けた鬼貫警部は、事件の真相に挑む。
感想
先日読んだ『リラ荘殺人事件』が面白かったため、この作品にも手を出してしまいました。
『リラ荘殺人事件』は1958年に発刊されていますが、この『黒いトランク』は1950~51年にかけて書かれたものだそうで、戦後間もない日本が舞台となっています。
当然新幹線はありませんし、特急という言葉も出てきません。
東京-博多間が5時間なんていう現代では考えられないような、ゆっくりとした時間の流れの中だからこそ、こういった面白いアリバイトリックが生まれるのかなぁと思いました。
また、思いがけず、近所の地名が登場。
以前はこんなところに列車が走っていたんだ、と思いましたが、そう言えば、かつて線路だったところは遊歩道になり、碑も残っているのを思い出しました。
『リラ荘殺人事件』は、アリバイ崩し、フーダニット、ホワイダニットありの作品でしたが、この作品は、アリバイ崩しがメイン。
鮎川哲也さんは、アリバイ崩しの作品を得意とされていたようですね。
なぜここまで面倒くさいトリックを使って人を殺すんだと思ってしまうのですが、そこにはちゃんとした理由づけがされていて、なるほどと思わされました。
アリバイ崩しものも面白いのですが、時刻表と睨めっこしながら読むというのが好きでない私には、不向きなジャンルなのかも知れません。
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