「ワクチンは毒です。あなたの精神と肉体と人生を破壊します」
コロナ禍の病院に入り込んできた人々はそう叫びながらビラを配りはじめた。
デモ活動はエスカレートし、ついにワクチン接種会場の機材を破壊。
しかし、保管されているワクチンを破棄しようとしたリーダーは、薬品保管庫の中で筋弛緩剤を打たれて死亡していた。
中山七里さんの『災疫の季節』を読みました。
あらすじ
志賀倫成が副編集長を務める〈週間春潮〉はコロナワクチンの危険性を煽る記事を掲載していたが、志賀自身はその編集方針に疑問を感じていた。
その志賀の高校時代の友人で医師の伊達充彦が勤める〈くぬぎ病院〉に、ワクチン反対を訴える〈阿神儀会〉のメンバーが押し入り、ワクチン接種会場の備品や注射器などを破壊した。
さらに、リーダーの阿川兵衛が薬品保管庫に侵入し、保管しているワクチンを破棄しようとするが、筋弛緩剤を打たれて死亡した。
院内の防犯カメラは〈阿神儀会〉によって停止され、消毒薬や手袋などの装備で証拠が残っていない現場で阿川を殺害したのは誰か?
感想
『夜がどれほど暗くても』に登場した志賀倫成がふたたび登場します。
『夜がどれほど暗くても』では、息子がストーカー殺人の犯人として逮捕され、事件を追う側から追われる側になってしまった志賀ですが、今回は新型コロナウイルスのワクチンに関する報道を巡って悩むことに。
読者が求める記事と、自らの言動は異なるのに、雑誌が生き残るには反ワクチンの記事を書かざるを得ない…
悩みの大きさこそ異なるにしろ、誰もが似たような経験をしたことがあるジレンマではないでしょうか。
第3波の頃を舞台にして書かれていますが、あの時の騒ぎはどこへやら。
いまだに毎週1回コロナ患者の数が発表されているにも関わらず、街を見るとマスクをしていない人の方が多いように思います。
ちなみに、私は屋内等ではマスク着用。父が免疫が下がる病気持ちなので…
最後は「どんでん返しの帝王」らしい結末が用意されているのですが、予想どおりだったかな。
『夜がどれほど暗くても』でも思ったのですが、少し説明しきれていない部分があったりして、それをごまかすかのようにさっさと切り上げてしまった感がありました。
週刊誌の副編集長を主人公に持って来るところに少し無理があったのでしょうか?
中山七里さんによるキレッキレのどんでん返しを何度も目にしているだけに、少し物足りない印象を受けました。
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