【読書】石持浅海『君が護りたい人は』

石持浅海 碓氷優佳シリーズ ├ 石持浅海

「奥津さんと結婚することは、歩夏ちゃんにとって人生をあきらめたと同じ意味だと思います。歩夏ちゃんから奥津さんを引き離さなければ」
トレッキング仲間の歩夏の両親が富士登山の最中に亡くなったのは、歩夏が中学2年生の時だった。
以来、歩夏の両親に富士登山を勧めた奥津は歩夏の未成年後見人として、大学を卒業するまで支援し続けた。
その関係が愛情に発展し、20歳違いの新郎新婦が誕生することになったが、歩夏と同年齢の三原は納得できずにいた。

石持浅海さんの『君が護りたい人は』を読みました。

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あらすじ

アウトドア用品店〈アンクル・アンクル〉の常連客たちが結成したトレッキングサークル「アンクル会」に所属する奥津は、メンバーの成富夫妻に富士登山を勧めた。
しかし、夫妻は落石事故に巻き込まれ、1人娘で中学2年生の歩夏が1人残された。
責任を感じた奥津は未成年後見人として歩夏を支援したが、20歳違いの2人の間には愛が芽生え、結婚することになった。
同じく「アンクル会」に所属する歩夏と同年齢の三原は、奥津が支援の代わりに歩夏を手に入れたと考え、「アンクル会」のキャンプで奥津の殺害を企てる。

感想

「碓氷優佳シリーズ」の6作目。現在刊行されている「碓氷優佳シリーズ」の最新刊です。

「碓氷優佳シリーズ」の1作目『扉は閉ざされたまま』と、3作目『彼女が追ってくる』は、倒叙形式の作品。2作目『君の望む死に方』はターゲットの殺害を優佳がことごとく阻む物語、4作目『わたしたちが少女と呼ばれていた頃』はシリーズの前日譚ともいえる優佳が高校生の時のエピソード、5作目『賛美せよ、と成功は言った』は犯人も動機もわかっている状況で、殺害を止められる立場にいた人物がなぜ阻止しなかったのかを優佳が間接的に責める作品になっています。
そして、今回の『君が護りたい人は』は、2作目同様犯行計画を優佳が阻止していく話になっています。

物語は、三原から奥津殺害の意思を聞かされた芳野の目線で語られます。
三原は、「アンクル会」のキャンプで殺害を実行する計画であることを芳野に打ち明けたものの、共犯にならないように計画の内容までは打ち明けていませんでした。

三原が奥津殺害を実行するのはいつか?その方法は?
芳野は頭をフル回転させますが、ここだと思ったのと同時に三原が動き出します。

44歳と24歳の結婚。
確かに年齢は離れていますが、もともと歩夏の両親と奥津は「アンクル会」の仲間で、歩夏も参加したことがあって顔見知り。
歩夏の両親と奥津の間には信頼関係もあったでしょうから、出会いは自然だし、人間性も嫌悪感を感じていなかったのでしょう。
両親の死後、支援をしてくれた奥津が父親代わりとなり、信頼関係が恋愛関係に変わっても、2人にとっては自然なことだったのでしょう。

一方、歩夏と同じ年齢の三原にとってみれば、奥津は恋愛感情を持っていた歩夏を奪った存在。
中学生、高校生、大学生という年齢で奥津と歩夏の関係を見ると、奥津が恩を着せて歩夏を我が物にしたと考えてしまうのでしょう。
そこで、言葉ではなく行動で2人の関係を引き裂こうとしたところが大人になり切れていないところでしょうか。
24歳という絶妙な設定が見事でした。

最後にキャンプ場をあとにする際の優佳と芳野の会話は、石持浅海さんらしかったです。
また、切れ味鋭い推理を見せながら、一方では冷淡な顔を持ち合わせる優佳の性格がよく出ていました。
『君が護りたい人は』というタイトルも絶妙でした。

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