彼は人の死を見定めるためにわざわざ出向いてくる。
死神は対象者を7日間調査し、「死」を実行するのに適しているかどうかを判断する。
死神が「可」と判断すれば対象者は調査開始から8日目に死に、「見送り」と判断すれば寿命をまっとうできる。
その判断は死神に委ねられており、ときに適当なものだったりする。
伊坂幸太郎さんの『死神の精度』を読みました。
あらすじ
死神の精度
死神の千葉は、大手電機メーカーのお客様係・藤木一恵の調査を行うことになった。
7日間一恵を調査し、千葉が「可」と報告を挙げれば一恵は8日目に死に、「見送り」と報告を挙げれば寿命をまっとうできる。
きっかけを作って一恵と夕食を共にすることに成功した千葉は、一恵を名指しで電話してくるクレーマーに困っているという話を打ち明けられる。
感想
調査部に所属する死神の千葉は、毎回違う容姿を与えられ、情報部に指示された”対象者”の調査を行います。
対象者を調査開始から8日後に死亡させるか、寿命をまっとうさせるかは千葉次第。
千葉の視点で淡々と語られていくのが伊坂幸太郎さんらしいです、
慣用句を知らなかったり、固有名詞に弱かったりするのですが、これだけいろいろな人と接していると、逆に詳しくなるんじゃないかな?って思ったり…
まぁ、そこが読者が息をつけるところでもあるのですが。
調査対象を「可」とするか「見送り」とするかは千葉の気分次第。
そんないい加減なことで良いのか?とも思うのですが、千葉なりの考えがあって判断している様子。
死神だけあって、食事の味はわからないし、殴られても痛みを感じない。
また、素手で触られた人は気絶してしまうなど、死神の設定がはじめからぶれておらず、安心して読むことができました。
最後に収められている『死神対老女』は、ちょっとしんみり、ちょっと心暖かくなる作品になっていました。
次作の『死神の浮力』は長編のようなので、どういう組み立てになっているかも楽しみです。
収録作品
表題作のほか、『死神と藤田』、『吹雪に死神』、『恋愛で死神』、『旅路を死神』、『死神対老女』が収められています。
死神と藤田
千葉はやくざの藤田の調査を行うことになる。
藤田は兄貴分を殺害した、敵対する組の栗木への復讐を考えていたが、組の幹部から自重するよう指示される。
吹雪に死神
千葉は雪に閉ざされ、携帯電話も通じない山奥にあるホテルの宿泊客の調査に訪れる。
しかし、そこには別の死に神がいて、宿泊客が次々に殺害されていく。
恋愛で死神
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死神対老女
「人間じゃないでしょ」
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美容師は千葉に、明後日10代後半の男女を4人程度連れてきてほしいと依頼する。
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