能面検事、特捜部を調査する――。
学校法人への国有地払い下げにおける贈収賄疑惑を調査していた大阪地検特捜部の検事に、証拠物件の改竄疑惑が持ち上がる。
すぐさま大阪地検に最高検察庁の検事らが乗り込んできたが、大阪地検の”能面検事”こと不破俊太郎も事務官の惣領美晴とともにこれに加わって、身内の検事の証拠改竄疑惑の調査を行うことになる。
中山七里さんの『能面検事の奮迅』を読みました。
あらすじ
学校法人への国有地払い下げにおいて、近畿財務局職員・安田啓輔の収賄疑惑が持ち上がる。
大阪地検特捜部が捜査にあたるが、証拠物件の改竄疑惑が報道され、特捜部の高峰仁誠検事が調査対象になる。
さらに、最高検察庁の検事らが大阪地検に乗り込んで調査を主導することになるが、その一員として”能面検事”の異名を持つ不破俊太郎が事務官の惣領美晴とともに加わる。
不破は高峰と安田の関係に着目するが…
感想
「能面検事シリーズ」の2作目です。
前作『能面検事』を読んでから10ヶ月近くが経っていて、前作の内容がほとんど記憶に残っていませんでした。
“能面検事”の本名もまったく覚えていないし、冒頭に出てきた惣領という名前には見覚えがあったものの、ほかの作品で目にしたのかもと…
この作品を読んで思ったのですが、このシリーズって中山七里さんの作品の中では地味な作品で、記憶に残りにくいみたいなんですよね。
事件のはじまりは、学校法人への国有地払い下げにおける贈収賄疑惑。
近畿財務局の職員や国会議員も絡んでいて…って、森友学園の事件そのものですよね。
あちらはただの国会議員ではなく、さらにアンタッチャブルな人物が絡んでいて、うやむやなままになっている気がしますが…
中山七里さんがこの事件にどうメスを入れるのか楽しみにしていたのですが、導入だけで、その後の展開は完全なオリジナル。
濱嘉之さんなら、”濱節”を炸裂させていたのでしょうが。
この作品には、2組の名コンビが登場します。不破と美晴を加えると3組かな。
どのコンビも本当に名コンビ。ただ、法律のあっちとこっちに分かれてしまいました。
表情を崩さず、ただ起訴か不起訴かを判断することに固執する、先入観や出世欲に惑わされない不破だからこそ事件の根幹を見破れたのかな?と思いました。
それにしても、あっちのコンビに肩入れしたくなるような書き方…
不破の四角四面な対応が冷たく感じられてしまうのですが、検事として正しい判断をしていることは間違いなく…
中山七里さんの異名は”どんでん返しの帝王”ですが、今回の作品はどんでん返しというよりも、じっくりとひっくり返された感じ。
最後にもう1つどんでん返しが用意されているのかな?と思いながら読ませていただきましたが、どうなっているかは読んでのお楽しみ。
シリーズものではありますが、この作品から読んでも問題ないようになっています(私自身、前作の記憶はまったくと言って良いほどありませんでしたし…)。
ただ、中山七里さんの作品の特徴で、ほかのシリーズに登場する人物が出てきたりします。
その作品を読んでいると少し得した気分になりますが、読んでいなくても損することはありません。
最後には…
機会があればぜひ!
コメント