日陽新聞文化部のパッとしない記者・山田文明は、傍若無人、自由奔放な後輩・雨柳円花と組んで、日本の土着文化を紹介する連載を担当することになる。
ハチャメチャな円花と行動を共にしているうちに、円花に惹かれてしまう山田。
一方、発行部数が落ち込む一方の日陽新聞は、デジタルコンテンツを得意とするUuRLに買収されるとの噂が流れる。
一色さゆりさんの『ジャポニスム謎調査 新聞社文化部旅するコンビ』を読みました。
あらすじ
日陽新聞文化部に所属する4年目の記者・山田文明は、未だ連載の企画書が通ったことが1度もない。
そんな山田に、デスクの深沢からついに連載記事の担当を言い渡される。
しかし、企画書を出したのは後輩の雨柳円花。高名な文化人だった雨柳民男の孫だというが、先輩の山田に対して呼び捨て、タメ語は序の口、デスクのことを面と向かって”深っちゃん”と呼んでしまう天真爛漫な人物。
はじめての取材に名刺を忘れてくる円花に、先行きを案じる山田だったが、円花の熱意に自分に足りない物を感じはじめる。
一方、発行部数が落ち込む一方の日陽新聞には、デジタルコンテンツで成長したベンチャー企業による買収提案が持ちかけられていた。
感想
好きです。こんな作品。
芸大卒の一色さゆりさんらしく、美術や文化を扱っているのですが、「水墨画」や「書」ではなく「硯」。「浮世絵」ではなく「大津絵」など、変化球を投じてくるのですが、知っているようで知らないテーマを持ち出してこられるので、面白いし、勉強にもなります。
知識を得るということが、こんなに楽しいことなんだと、改めて実感しました。
さらに、はじめはとんでもない後輩と思っていた円花に惹かれていく山田。
恋愛の要素を持ち込んだのも良かったと思います。
また、山田と円花が勤める新聞社は、デジタルコンテンツで成長したベンチャー企業に買収されるという噂が流れはじめ、だんだんと現実的なものに。
しかも、金融や経済に特化したデジタルメディアを目指すという方針を示しているため、文化部は存続の危機に。
そんな今どきの話題プラス将来の不安といった要素を混ぜてきたのも良かったです。
あとは、この作品がシリーズ化されるかどうか…
私としてはぜひシリーズ化して欲しいのですが、どうなんでしょう?
一色さゆりさんは、「コンサバターシリーズ」を書いておられるので、シリーズ作品を書かない方ではない様子。
最後がどういう終わり方をするかで、次があるかどうかがある程度見えるのかな?と思ったのですが…
これ以上はネタバレになりかねないので、書かないでおきます。
文句なしに面白かったです。オススメ!
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