【読書】横山秀夫『震度0』

横山秀夫 ├ 横山秀夫

阪神淡路大震災発生前夜、被災地から600km離れたN県警察本部の警務課長・不破が失踪した。
不破は自ら行方をくらませたのか、それとも何者かによって拉致されたのか?
警務部長の冬木は、不破が1行日記をつけていたシステム手帳を確認するため、官舎の机を調べることを提案するが、本部長の椎野はプライバシー保護を理由に、その提案を頑なに却下する。

横山秀夫さんの『震度0』を読みました。

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あらすじ

阪神淡路大震災発生前夜、N県警察本部の警務課長・不破義仁が失踪した。
警務部長の冬木優一は、官舎の机を開け、不破が1行日記をつけていたシステム手帳を調べることを提案するが、本部長の椎野勝巳はプライバシー保護を理由に却下する。
椎野は、金融業者から受け取ってしまった賄賂を返すように不破に指示をしており、その件が発覚するのを恐れていた。
さらに、警務部長の冬木と刑事部長の藤巻昭宣は、不破失踪の件の捜査をどちらが主導するかで対立する。

感想

1995年1月17日、私は地鳴りの音で目を覚ましました。
10秒以上続いたように感じましたが、実際は数秒だったと思います。
これまで経験のない揺れを感じ、慌てて布団を被り、端から顔を出して、本棚から本が次々と落ちていくのを見ていました。
同じ頃、1階では母が弁当に入れるために揚げ物を調理中(その頃の冷凍食品は、油で揚げる必要がありました)。
本能なのか、たまたま起きていた父がコンロの火を消したため大事には至りませんでしたが、1歩間違えると…

震源から神戸までの距離と、私の家までの距離はほぼ同じ。
プレートや断層の位置によっては、神戸のような被害に遭っていたかも知れません。
当時は今みたいに震度計をあちこちに設定していなかったので、1番近い震度計の値は震度4。
しかし、古い木造家屋が倒壊したり、神社の鳥居が倒れたりしたことから、震度5程度の揺れがあったと推測されています。

そんな、阪神淡路大震災を取り入れた作品になっているのですが、日々刻々と増えていく死者と負傷者数の報告が入るだけで、どう繋がっていくのだろう?と思いながら読んでいました。
読み終わってからも、阪神淡路大震災に触れるのであれば、もっと深く踏み込んで欲しかったなと感じました。

警察小説というと、警視庁警備部や公安部、警察庁警備局などを歴任した濱嘉之さんの作品を思い浮かべるのですが、この作品も、濱嘉之さんに負けず劣らずリアルな作品になっていたと思います(実際に見たわけじゃありませんが…)。
濱嘉之さんは、警察内部から理想像を見ていて、横山秀夫さんは、新聞記者の視点で、警察上層部の悪いところを見ていたのかなと感じました。そのあたりが、最後の1文に表れていたかな。
ひょっとすると、警察組織を客観的に見ることができる、刑事事件担当の記者が1番よく見えているのかも知れません。

横山秀夫さんが描いたN県警察本部の上層部は、腹の探り合いや覇権争いで、組織として成り立っていません。
さらに、本部長の椎野に統率力がないため、信頼もなく、余計に組織が纏まりません。
自らにやましいことがあったとはいえ、よくこんな人間が本部長まで昇進したなぁと、驚くやら呆れるやら…

最後は怒濤の展開。
ただ、見えてきたのは…

今回、不破の失踪が1番大きな問題でしたが、県警本部の警務課長が失踪するということが、どれくらいの問題なのかというスケール感が掴めず。
警察幹部の自殺だってあるわけですから、失踪がそこまで問題になるの?と…
横山秀夫さんとしてみれば、それくらいわかるでしょってことだったのかも知れませんが、私としては説明が欲しかったなと思いました。

コメント

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