[血の海地獄。さすがに魚とかとは違う。臭いがだいぶキツい]
自ら犯した殺人の様子を投稿したSNSの記事は、瞬く間に日本中に広まった。
その投稿を行ったアカウントの持ち主とされた山縣泰介は、自分の知らないところで殺人犯にされてしまい、逃亡を余儀なくされる。
あらすじ
ハウスメーカーの営業部長・山縣泰介は、見方もわからないSNSに自らのアカウントが作成され、殺人をほのめかすツイートをされてしまった。
あっという間に身元をネットに晒されてしまった山縣は、警察と、自らをリンチしようとするネット住民から逃れるため、逃亡生活に身を置くことになる。
山縣のツイートを拡散させた初羽馬と行動を共にするサクラや、山縣の娘・夏実は、自らの方法で山縣の行方を追う。
感想
今年9月に公開予定の映画の原作です。
浅倉秋成さんの作品は、昨年も『六人の嘘つきな大学生』が映画化されていますが、作品を読んでいると映画化しやすい作品だなぁと感じました。
また、時勢をうまく取り入れているところも良いですよね。
今問題となっている、インターネット上の情報の真偽を見極める「ファクトチェック」が重要な要素になっていますが、これだけ入念に仕組まれると、なかなか見極めるのは難しいのではないかと。
学校でも、ファクトチェックについてどう教えるかで先生たちが苦心しているようですが、私はもっと簡単で、大切なことがあると考えています。
それは、インターネットをはじめとしたメディアの情報を見るときは、「書いてあること(映っていること)が真実だとは限らない」という疑問を持つクセをつけること。
情報が誤っていることがあるのは、必ずしもインターネットだけではありません。
そして、真偽について疑問を持つことが、ファクトチェックなどの入り口になります。
特にSNSは即時性の高い情報が多いため、裏付けを取るのは非常に難しいです。
なので、いきなりファクトチェックの仕方を教えるのではなく、インターネットやその他メディアには誤った情報が含まれていることがあるので、鵜呑みにしたらダメなんだよってところに重点を置いてほしいなと。
作品の方は、山縣が知らぬ間に殺人犯の汚名を着せられて、逃亡を余儀なく…
これは重い読書になりそうだなと、覚悟を決めて読み進めたのですが、だんだんと心の重石が消えていって、最後はページをめくる手が止まらなくなってしまいました。
ネタバレになってしまうので書けないのですが、SNSについて大きな意味を持つ部分での誤りを1つ見つけてしまいましたが、インターネット、特にSNSが持つ問題点をうまく取り入れられていると感じました。
最後にあれっ?となるのですが、ある程度予想の範囲内。
でも、その前振りがうまかったため、うまくしてやられたなぁと、騙されていたことがわかっても、清々しい気持ちになれました。
映画化されるということもあり、面白い作品になっています。
機会があればぜひ!
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