『扉は閉ざされたまま』で探偵役として鮮烈なデビューを飾った碓氷優佳。
今回の作品は、「碓氷優佳シリーズ」の4作目にして、前日譚とも言える連作短編集。
中高一貫の高校に編入した優佳は、友人やクラスメイトたちに関する謎や誤解を、ちょっとした言動をもとに解き明かしていく。
石持浅海さんの『わたしたちが少女と呼ばれていた頃』を読みました。
『赤信号』
中高一貫教育の私立碩徳横浜女子高等学校の入学式の日、上杉小春の後ろの席に見慣れぬ顔があった。
彼女の名前は碓氷優佳。
公立の中学から、碩徳の高等部へ編入してきたらしい。
しかも、特進理系コース。相当の狭き門をくぐってきたに違いない。
この碩徳には、駅から学校へ向かう交差点の信号が赤になると、受験に失敗するという言い伝えがあった。
感想
「碓氷優佳シリーズ」の4作目で、シリーズ初の短編集になっています。
これまでの3作を読んだ方には、特に1作目の『扉は閉ざされたまま』の背景がわかって面白いでしょうし、読んでいない方でも楽しむことができると思います。
今回描かれているのは優佳の高校時代。
当時から頭脳明晰で、推理力も抜群だったんだなぁと感心(最後にちょっと変わるんだけど…)。
また、当時から火山学者を目指していたようです。
この一直線なところも優佳らしい。
優佳が通う高校は土曜日も授業があることになっていますが、まだ土曜日が休日になる前だったのでしょうか?それとも、私立の進学校だから土曜も授業?
特進コースは7時限目まで授業があるようなので、後者かも知れませんね。
私は、ちょうど週休1日から週休2日に遷移した時代。
小学生の途中で第2土曜日が休みになり、その後第2、4土曜日が休みに。そして、最終的にすべての土曜日が休みになりました。
ちなみに、私が通った大学は金曜日も半日。もちろん、取得しなければならない単位は変わりませんので、詰め込み気味のカリキュラムになっていたのでしょうが。
そして、春休みと夏休みが2ヶ月ずつと考えると、年の半分くらいは講義がないことに。さらに、講義が入っていない時間を考えると…
極端な話、この時間をどう使うかで人生変わるよなぁと思って、怖くなったことがあります。
もっとも、有意義に使い切ったかと聞かれると、はいとは言えないのですが…
最後に小春が優佳の考察をした結果は、驚くとともに、確かに的を射ていると納得できるもの。
過去の作品に当てはめてみても、なるほどと思わされます。
そして、同時に怖いとも…
あと…
石持浅海さんの作品はこれで5作目なのですが、今回、初めて石持浅海さんが男性だってことを知りました。
扉の「著者のことば」が”僕”ではじまっていてビックリ!
この作品にしても、女子高生だけのグループの会話のシーンとか、本当に男性が書いたの?って思うほどリアル(まぁ、私はその中に入ったことがないわけですが…)。
改めて、恐ろしい作家さんだなぁと思いました。
収録作品
『赤信号』のほか、『夏休み』、『彼女の朝』、『握られた手』、『夢に向かって』、『災い転じて』、『優佳と、私の未来』が収められています。
『夏休み』
夏休み、クラスメイトの”ショージ”に恋人ができた。
しかし、恋にうつつを抜かしたわけではないらしく、試験の成績がジャンプアップした。
『彼女の朝』
学級委員長で成績クラストップの”ひなさま”には、夜中に本を読みながら飲酒する悪い習慣が。
今日も、2日酔いで登校してきたが…
『握られた手』
”ひらひら”と”大學”はいつも一緒。登校途中も手を繋いで歩いているし、弁当も2人で向かい合って食べる。
クラスの中では、2人が百合(女性同性愛者)だと思われているが…
『夢に向かって』
父親が開業医の”カッキー”は、漫画家になるのが夢。
親からの指示で医学部に入る必要はあるが、最低限の勉強以外は漫画を描くことに時間を割いている。
『災い転じて』
高校3年の正月、優佳らは初詣に行くが、帰りの石段で”サッサ”が転倒し、右腕を骨折してしまう。
センター試験まで2週間。ある日、突然サッサが気持ちを入れ替え、ギプスを優しく撫でる。
『優佳と、私の未来』
高校の卒業式の日、優佳ら仲の良い友達7人がサッサの家に集合し、アルコールで卒業を祝う。
その席で、優佳が姉の大学のサークル仲間と一緒にキャンプに行ったときに惚れた男性当てクイズがはじまる。
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