アイルランド・スライゴーのB&B(ベッド&ブレックファスト)で、NCF(新世紀のフィニアン団)の副議長が殺害された。
和平交渉を間近に控えたこの時期に、副議長が殺害されたとなっては交渉に支障が出ると判断したNCFのメンバーたちは、警察に届けずに、自らだけで事件を解決しようとする。
北アイルランド問題を取り上げた社会派ミステリ。
石持浅海さんの『アイルランドの薔薇』を読みました。
あらすじ
アイルランドの首都ダブリンにある生化学研究所の研究員、ジェリーと日本人のフジは、週末にスライゴーにある湖を目指すが、大雨の中、車のワイパーが壊れてしまい、近くのB&B(ベッド&ブレックファスト)に泊まることになる。
B&Bにいた客は2人の他に7人。
翌朝、そのうちの1人が、頭を火掻き棒で殴られ、両膝が砕かれた状態で、2階から窓の下に落とされ、死亡しているのが見つかった。
殺害されたのは、南北アイルランドの統一を目指す勢力の1つ、NCF(新世紀のフィニアン団)のメンバーであることがわかった。
NCFのメンバーは他に2人。警察には連絡せずに、自らの手で犯人を挙げようとその場を制する。
感想
たぶん長くなります…
行ったことはまだないのですが、アイルランドは私の大好きな国。
学生の頃には自分なりに勉強したことがあって、その時に読んだ本の中の数冊が、参考文献としてあげられていました。
妻と出会ったのも、アイルランドの歌姫・エンヤのファンの交流会みたいなところで。
順序としては、エンヤを好きになって、そこからアイルランドに興味を持ったって感じかな?
学生の頃に1度行くチャンスがあったのですが、それを逃してしまったのが心残りです。
登場人物たちが飲んでいるギネスビールは私も大好き(ギネスブックを出しているギネス社です)。
殺し屋の名前は『ブッシュミルズ』。アイリッシュウイスキーの代表的な銘柄です。
ブッシュミルズはジェムソンの次に好きな銘柄ですが、普通のブッシュミルズよりもブラックブッシュの方が好きかな。12年ものとかも好きだけど…
まぁ、今はアルコールを断っているので、飲むことはなくなりましたが。
さて、私が好きになったアイルランドは表側ですが、その裏側には南北アイルランドの分断問題があります。
南北アイルランドの統一を目指す最大勢力であるIRL(アイルランド共和国軍)によってテロが繰り返されてきた歴史は、私くらいの世代以上の方ならご存知かと思います。
ロンドンの地下鉄の駅からごみ箱が撤去されたりしました。
南北統一を目指す組織の中にも、和平協定に賛成する者、反対する者がいて(1度停戦して、南北統一に向けた話し合いをしようという人たちと、テロ行為を続けて、力で南北統一を実現させようとする人たちですね)、そのあたりの考え方の違いが物語に上手く活かされています。
ちなみに、物語に出てくるNCF(新世紀のフィニアン団)というのは創作で、このような名前の団体は無いようです。
日本人研究者のフジと、NCFのトムがメインで謎を解いていきますが、フジの頭脳明晰っぷりが目につきます。
特に、拳銃を無力化する方法。
こんな方法があったのか!と、思わず唸ってしまいました。
確かにこうなると元に戻すのは難しいですし、そのまま発射したいとも思いません。
この方法は石持浅海さんのオリジナルなのかなぁ?
犯人、そして『ブッシュミルズ』の正体はわかったと思ったのですが、そこは石持浅海さんが仕掛けた罠の中。
考えが浅かったです…
そういえば、このところ南北アイルランドの統一について何も聞きませんが、どういった状況なんでしょう?
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