花咲小路商店街でたいやき屋を営んでいる宇部禄朗は、元甲子園球児で、現在は野球の審判もしている。
実家の〈たいやき波平〉を継ぐまでは、2年間交番で勤務していたが、ひとの嘘を見抜く特技を持つ禄朗は、その間の検挙数が228件という凄腕の警察官だった。
そんな禄朗は、高校1年生の時、野球の試合後球審を殴ったという過去を持っていた。
小路幸也さんの『花咲小路二丁目中通りのアンパイア』を読みました。
あらすじ
実家を継いでたいやき屋〈たいやき波平〉を営む禄朗は、元甲子園球児。
現在は選手ではなくアンパイアとして野球に関わっているが、ランニング中に飛び出してきた仔猫を避けようとして膝の靱帯を痛めてしまった。
婚約者のユイちゃんが店を手伝いに来てくれるので、禄朗は椅子に座ってたいやきを焼くだけでよくなり、店を開けることができていた。
そんな禄朗は、人の言葉に交えられた嘘を見抜くことができる。
その特技を活かし、たいやき屋を継ぐまでの2年間交番で勤務している間に、検挙数228件という異次元の成績を残していた。
しかし、禄朗は高校1年生のときの試合で、アンパイアを殴ったという過去を持っていた。
感想
「花咲小路シリーズ」の第8弾です。
数多い小路幸也さんのシリーズものの中でも、2番目に好きなシリーズです。
ちなみに、1番好きなのは「マイ・ディア・ポリスマンシリーズ」。
小路幸也さんの作品は、何気ない日常を描きつつ、”不思議”なことを1つ編み込んでいるのが特徴かなと思っています。
この作品だと、禄朗が嘘を見破れるというところですね。
同じ「花咲小路シリーズ」の1つ前の作品『花咲小路二丁目の寫眞館』だと、社長の久坂重が写真を撮ると見えないはずのものが写り、動画を撮るとタイムスリップしてしまうというところ。
「東京バンドワゴンシリーズ」では、亡くなった堀田サチさんが地上をふわふわと動き回り、サチさんの目線で語られるというところですね。
また、「マイ・ディア・ポリスマンシリーズ」だと、女子高生の楢島あおいが誰にも見破れないようなスリの才能を持っているところでしょうか。
この作品、禄朗の能力があちこちで発揮されるかというとそうではなく、ほんの2つ3つほど。
でも、それが最後に効いてくるんですよね。
正直、小路幸也さんって、こんなに伏線の回収が上手い作家さんだったっけ?と思うほど、最後の纏まり方が素晴らしかったです。
序盤に出てきた、もう忘れかけていたことまで最後に1つに纏まって…
きれいな終わり方だなって思いました。
纏まると言えば、「花咲小路シリーズ」の過去の登場人物たちが前半に多く顔を出したので、ひょっとして「花咲小路シリーズ」を纏めにかかってる?と思ってしまいました。
このシリーズは、花咲小路商店街やその周囲に構える店や家の1軒を順に取り上げる構成になっていて、当然同じ界隈にいる人たちなので、相互に登場することがありましたが、それがやたらと目立つなと。
でも、前半だけだったし、出てこなかった人も多くいたので、まだまだ続いてくれるんじゃないかと思っています。
このシリーズの出版ペースを見てみると、だいたい2年に1作のペースで書かれているようですね。
次に読めるのは2年後かぁ。長いですね。
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