神紅大学ミステリ愛好会の設立者にて会長の明智恭介が、新入生の葉村譲を助手に従えて、探偵として解決した日常の謎を5編集録。
ミステリ小説をこよなく愛するミステリ愛好会の会長は、探偵としても優秀だった!?
今村昌弘さんの『明智恭介の奔走』を読みました。
あらすじ
『最初でも最後でもない事件』
神紅大学コスプレ研究部が使用している、古いレンガ造りの2階建ての建物に泥棒が入った。
1階の廊下の奥、階段の下で犯人が気絶しているところを、大学の警備員が発見したのだが、犯人はあとから侵入してきた人物と取っ組み合いになり、床にたたきつけられたと供述した。
会員わずか2人のミステリ愛好会の会長明智は、新入生の葉村とともに、事の真相を明らかにする。
感想
『明智恭介の奔走』というタイトルを見て、明智恭介という新しいシリーズキャラクターの登場かと思ったのですが、今村昌弘さんのデビュー作『屍人荘の殺人』の序盤で呆気なく殺害されてしまった、ミステリ愛好会の会長のことでした。
明智恭介の最期は覚えていましたが、名前はすっかり忘れていました。
あと、学生食堂で葉村と学生が何を注文するかを推理していたシーンも記憶に。
『屍人荘の殺人』では、あまりに序盤でいなくなってしまったため、探偵小説マニアではあるけれど、探偵としての才能は未知数だったのですが、今回はなかなかの探偵っぷりを発揮しています。
もちろん、まだまだ未熟なのですが、目の付け所は悪くないんじゃないかと。
『屍人荘の殺人』が発生するまでという期限つきではありますが、明智恭介シリーズを続けてみても面白いんじゃないかと思いました。
このほか、『とある日常の謎について』、『泥酔肌着引き裂き事件』、『宗教学試験問題漏洩事件』、『手紙ばら撒きハイツ事件』が収められています。
『とある日常の謎について』
人もまばらな廃れた藤町商店街。その中に建つ1棟のボロビルが2000万円で売れたという。
話を聞いた明智は『赤毛組合』を思い浮かべるが、はたして購入者の目的とは?
『泥酔肌着引き裂き事件』
同級生との飲み会で泥酔して帰宅した明智。翌朝目を覚ますと、玄関に引き裂かれたパンツが落ちていて、自らは地肌にズボンを履いた状態だった。
部屋の中は密室になっていたのだが、何が起きたのか?
『宗教学試験問題漏洩事件』
宗教学の授業をサボっていた久守みのりと寺松颯は、試験を受ける条件として柳教授の部屋で反省文を書くことに。
柳は電話をかけるために外へ、先に書き終えた寺松が退室し、みのりがトイレに行っている間に部屋が荒らされ、金庫の中から試験問題を入れたUSBメモリが盗まれた。
『手紙ばら撒きハイツ事件』
〈ハイツ徳呂〉の複数の部屋のポストに、ストーカーからと思われる手紙が投函された。
探偵事務所所長の田沼は、所員が1人足をケガしたため、急遽大学1年生で現場経験の無いアルバイト・明智を連れて捜査にとりかかる。
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