米澤穂信さんの『儚い羊たちの祝宴』を読みました。
あらすじ
大寺は、夏という厨娘を雇った。
夏は宴の料理を作るのが専門で、普段の食事は作らないという。
さらに、6人分の料理を作るために、羊の頭を12頭分、長葱を10kgなど、尋常ではない量の食材を毎回仕入れる。
感想
5作の短編が収められているのですが、いずれも昭和中期くらいのお金持ちの家を舞台にした作品となっています。
その中でも、主と使用人の関係に着目した作品ですね。
5編の中では、この『儚い羊たちの祝宴』が1番よくわからない作品だったでしょうか…
ただ、なんとなく予想はしていたのですが、終盤に出てくる「アミルスタン羊」というものの正体を知った瞬間、まったく別の作品に見えてきてしまいます。
「アミルスタン羊」については、ネットで調べればすぐに出てくると思いますので、知りたい方はどうぞ。
なんとなく想像するだけで充分な方は、調べる必要はないと思います。
個人的には、『山荘秘聞』が、1番ぞくぞくと来たでしょうか。
1度予想を裏切っておいて、ほっとしたところに再度恐怖を持って来る。
最後に守子が突きつけたものの正体を想像すると…
いやぁ、恐ろしいですねぇ、怖いですねぇ。淀川長治さんのような感想になってしまいます。
「古典部シリーズ」のようなものもあれば、『黒牢城』や『インシテミル』のような作品も。そして、この作品と、ますます米澤穂信さんの作風がわからなくなってしまいました。
きっと、器用な方なんでしょうね。
表題作のほか、『身内に不幸がありまして』、『北の館の罪人』、『山荘秘聞』、『玉野五十鈴の誉れ』が収められています。
『身内に不幸がありまして』
丹山家の長男・宗太がライフル銃を持ち出し、家族や使用人12人を死傷させた。
妹の吹子に仕える村里夕日が肩を槍で突き、吹子が右手首を切り落とすことで制圧したが、1年後、伯母の満美子の死体が、手首を切り落とされた状態で発見される。
『北の館の罪人』
妾の娘として育った内名あまりは、母の死を機に、六綱家を訪ねる。
六綱家には、北の館と呼ばれる、窓に鉄格子がはめられた別館があり、そこで暮らす長男・早太郎の世話をすることになる。
『山荘秘聞』
八垣内にある辰野家の別荘の管理人・屋島守子は、早春の山中で、登山者が倒れているのを発見する。
翌日から、山岳部や地元登山会のメンバーが、遭難者救助のために山に入ってきた。
守子は、救援隊のために、食事や寝る場所を提供するが…
『玉野五十鈴の誉れ』
小栗家の1人娘・澄香は、15歳の誕生日に使用人として、同い年の玉野五十鈴を側につけられる。
しかし、伯父が殺人事件を犯して父は離縁され、澄香自身も離れに軟禁されてしまう。
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