小路幸也さんの『オール・マイ・ラビング』を読みました。
あらすじ
『あなたの笑窪は縁ふたつ』
〈東京バンドワゴン〉の店主・堀田勘一は、常連客の茅野とともに、元セドリ屋のネズミの墓参りに行くことになった。
茅野の甥・靖祐が同行することになったが、靖祐は大学サークルの夏合宿で、不思議な体験をしたという。
寺で順番に物語を1つずつ交代で読んでいったのだが、はじめは存在しなかった百話目がいつの間にか出現し、その内容が靖祐の実体験に基づくものだったという。
感想
「東京バンドワゴンシリーズ」の第5弾です。
勘一から見て曾孫のかんなと鈴花が生まれたことで、ますます慌ただしくなった堀田家。
でも、あたたかさはそのまま。
この家族、一見バラバラなんだけど、纏まるところはちゃんと纏まって、本当に良い人たちが集まっています。
周囲の人たちも良い人たちばかりだし、うらやましいなぁと。
映画『男はつらいよ』を思い出してしまうのは私だけじゃないはず。
『男はつらいよ お帰り 寅さん』のノベライズを小路幸也さんが担当されたというのも、納得です。
もちろん、良いことばかりではないけれど、良いことと悪いことを足してゼロになるか、それ以上になれば幸せなのかなって。
現実には、悪いことばかりに気を取られてしまいますが、小さな幸せに目を向けられる人間になりたいなと思いました。
他に、『さよなら三角また会う日まで』、『背で泣いてる師走かな』、『オール・マイ・ラビング』が収められています。
『さよなら三角また会う日まで』
朝、〈東京バンドワゴン〉の店先に、「捨て猫。よろしくお願いします」と書かれた段ボール箱が置かれていた。中には、猫に関係する古本が8冊。
後日、今度は「捨て犬。よろしくお願いします」と書かれた段ボール箱が置かれていた。
『背で泣いてる師走かな』
紺が師事していた大学准教授・百々が〈東京バンドワゴン〉を訪ねてきた。
自分が所持している、谷崎潤一郎訳『源氏物語』の初版を、しばらくの間預かって欲しいのだと言う。
つてを辿って情報を集めると、百々は教授昇進の話があるにも関わらず、拒んでいるらしい。
『オール・マイ・ラビング』
アメリカのブックエージェント、ハリーが我南人を訪ねてきた。
ハリーは、世界的スターのキースから預かったギターと手紙を持ってきて、返事をもらうまで帰らないと言う。
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