京都の人がみんな腹黒いわけじゃないと言われるかも知れませんが、この作品の見所は、全編にわたって、堂々と伏線が張り巡らされているところにあります。
伏線なのに伏せられていないなんて!
まさか、あのやりとりも伏線の一部だったなんて…
伏線が回収されるとき、驚嘆の嵐に見舞われる。開いた口が塞がらなくなった1冊。
きっとあなたは、すでに騙されている。
下村敦史さんの『告白の余白』を読みました。
あらすじ
全国を放浪していた兄・北嶋英一が突然帰宅し、土地の生前贈与を要求した。
父が渋々同意して手続きを行った途端、英一は京都祇園の京福堂の清水京子が現れたら、自分が譲り受けた土地を譲渡してほしいという遺言書を残して自殺した。
双子の弟・英二は、京都祇園の京福堂を訪れるが、兄の英一と間違えられてしまい…
感想
何と言えば良いのでしょう。
とっても新鮮な気分を味わえる作品。
土佐弁に続き、京言葉。
少し読みにくさを感じながらも、じっくりと読むと味わい深いんだろうなと思っていると、気づかぬうちに幾重にも伏線が張り巡らされていました。
言葉の表面からは真意が見えない京都の人の言葉。
やっぱり難しいよなぁと思いつつ、下村敦史さんがうまく使いこなしておられるなと思ったら、その部分に伏線が張られていたんですね。
伏線というのは、文字通り伏せられているものと思っていましたが、ある意味堂々と張られていたことに驚き。
こういった伏線の張り方を見るのは初めてで、とても新鮮でした。
最後に伏線が回収されていく様といったら!
もう、見事としか言いようがありませんでした。
そして、そこに通っている血液。
人と人とのやりとりだからこその物語がそこにありました。
他の作品も手に取りたくなる作家さんです。
オススメ!です。
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