森博嗣さんの『χ(カイ)の悲劇』を読みました。
あらすじ
かつて真賀田四季の研究所で働いていた島田文子は、いくつかの職を経た後、香港の会社で働いていた。
その香港で開催された人工知能に関するエキシビションの会場で、遠田長通から声をかけられ、愛知で起きた飛行機事故について質問される。
新入社員2人と昼食を食べに出た文子は、駅で遠田と再会する。
そして、トラムの中で遠田が毒針で殺害されてしまう。
感想
エラリー・クイーンの『Xの悲劇』かと思いきや、ギリシャ文字で『χ(カイ)の悲劇』となっています。
第1の被害者が、電車の中で毒針を使って殺害されるというのも同じです。
本家通りにいくのであれば、次は電車の車掌が殺害されることになるのですが、どうなるかは読んでのお楽しみです。
本を開いて主要登場人物を見ると、加部谷恵美たちの名前も、西之園萌絵たちの名前もありません。
萌絵の名前がちょろっと出てくるだけで、この作品の主人公は島田文子。
かつて真賀田四季の研究所にいただけのことはあって、国内有数のハッカーとしての腕を保っています。
ちなみに、ハッカーというのは本来コンピューターなどに関する高度な知識を持っている人のことで、それを悪用する人だけを指す言葉ではありません。
日本に入ってくるときに、A新聞が誤用したため、誤ったイメージが浸透してしまったという話を聞いた覚えがあります。
そのハッキングの様子を描いた場面は、スピード感とスリルが入り混じった素晴らしいものになっています。
情報系出身の私ですが、このあたりの知識はあまり持ち合わせておらず、建築系の森博嗣さんの方が詳しいんじゃないかと、内心冷や汗をかきながら読んでいました。
遠田がトラムの中で、どうやって殺されたのか、なぜ殺されたのかという謎の答えには衝撃を受けました。
そんな馬鹿なことはある?と思うのですが、あるかも知れないと思わされたり…
本家『Xの悲劇』でも衝撃を受けたのを覚えていますが、この『χの悲劇』も名作(迷作?)になるかも知れません。
コメント